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ぴしゃんと水滴が落ちる音。
外は雨なのか、天井近くの細い風穴だけでは外の様子は分からない。
夜も昼もない土牢。
閉じ込められて何日経ったのか。ヤブは唯一置かれた粗末な木のベッドに腰掛けぼんやりと思う。
ケイ姫の懇願により、ヤブたちはその場で切り捨てられることはなく土牢に閉じ込められた。
この後処遇はどうなるのか、火炙りか首吊りか。それはヤブにはまだ分からない。
イノーが必死に嘆願しているとも聞く。教えてくれるのは毎食事に顔を出すイノー本人とダイキだ。
ヒカルがダイちゃんと呼んでいた従者。
イノーは言った。
食事はオレか、このダイキが持ってくる。それ以外の者が持ってきた食べ物を食べてはいけないよ。
父たちは毒殺された。それは林檎が明かした事実。
だが林檎の魔力を持ってしても王が話さなかった秘密。
それもイノーが話してくれた。いや、話さなくてももう分かっている。
偽りの双子の姫君。
彼女たちはイノーの見せていたイリュージョンだった。
ケイ姫がイノーのことで、ヤオトメ姫が――――
「……まさかヒカルくんがあの姫さんとはね」
同じ部屋の隅で横になっているユウヤが呟いた。
ふたりが同じ土牢なのもイノーの配慮だ。
イノーは顔を出せば悪態ばかりだが、自分たちの命を救うために必死になってくれているのはわかる。
すべては双子の弟、ヒカルの為に。
「……騎士になりたかった王子……王子として認められない姫君……」
イノーは言った。
この国は姫が他国の王子を婿とし、跡を継ぐと決まっている。それは民衆はもちろん、ヤブたちのような他国の者も知っている。
だがそこには民衆が知らない隠された条件があった。
それは、その姫は魔力を持たねばならないということ。
魔道士を迫害している国にあって、何故か王家や準王族の公爵家には必ずといって良いほど魔力を持つ姫が誕生していた。
魔道の力は恐ろしさと共に、時に有益だ。
歴代の王はその力を持つ者を次代の王妃とし、秘密裏に利用してきた。王家と高貴な貴族のみが知る、代々受け継がれてきた秘密の慣習だった。
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SK329(プロフ) - ずみさん» コメントありがとうございますっ!やっぱり男子が良いですよねぇ、ドレス姿になるにはいつも羞恥が欲しいです笑 まだなにも浮かんでませんが、次またファンタジーやったらまたまた雷になりそうな予感があります笑 (2019年12月11日 11時) (レス) id: f6c245c48e (このIDを非表示/違反報告)
ずみ - 完結おめでとうございます!sk329さんのファンタジーは毎回ワクワクさせるもの。雷の設定がだいすきです。やぶひかは男にしてくれてありがとう! (2019年12月10日 1時) (レス) id: 61e430b579 (このIDを非表示/違反報告)
SK329(プロフ) - なえさん» コメントありがとうございますっ!dkwk嬉しいですっ物語が破綻しないで良かった(*´∀`*) 続編もよろしくお願いいたしますっ (2019年12月9日 13時) (レス) id: f6c245c48e (このIDを非表示/違反報告)
SK329(プロフ) - ひーさん» コメントありがとうございますっ!雷、なんかイメージに合うんですよね!火より雷。単に黄色だから?笑 双子設定も楽しく書けたのでそう言っていただけると嬉しいですっ。続編もよろしくお願いいたしますっ (2019年12月9日 13時) (レス) id: f6c245c48e (このIDを非表示/違反報告)
SK329(プロフ) - しろくまさん» ありがとうございますっ!父と子…確かに。でも気づけば勝手になんです、多分書きやすいのです笑 王国は明確にモデルいましたが、かごめと今回は単にやな奴ですね汗 そしてパレード、ラストの竜のとこ恐れ多いけれども合う…と思ってしまいました汗 (2019年12月9日 13時) (レス) id: f6c245c48e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:SK329 | 作成日時:2019年10月8日 16時