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それから以後は、まるで他人事みたいな、どこか霞がかかったような状態で。
大先生に直接会うこともできぬまま、オレは警察が用意した別の街へ行った。
連絡したらすでに警察から説明があったのか、片づいたらまた戻ってこいって笑うだけ。
さすがあの街で長く医者やってる人だ、腹が据わってる。
オレに用意されたのは、東京から遠く離れた、ヒカルのいる県の隣。
そこそ大きい、名前でしか知らない、知り合いも誰もいない街。
そこでオレは往診の医者をすることになった。
全部警察の言いなりだ。
抵抗するのもなんだか疲れちまってな……。
ヒカルを救ったことも、ヒカルがおかしくなったのも、ヒカルを置き去りにしたのも、全部全部悪夢みたいで。
ヒカルの存在さえ、まるで夢みたいに現実味が薄れていく。
呼ばれるままに寝たきりの婆さんや爺さんを診察して、時間が来たら帰る。
警察が用意した殺風景なアパートにひとり。
ベッドとテレビくらいしかない。
ぽつんとひとりでそこに座ってる。
そういやオレ、こんなに誰とも話さないの生まれて初めてかも。
子供の頃から外に出りゃ誰かはいた。病院に勤めてからは看護婦さんだって。
それがなんの音もしない。
窓を開けてもなにも。
まるで死んでるみたいだ。町が？ オレが？
そのせいかな、ぼんやり座ってるとヒカルの声が聞こえる気がしてな……。
『やぶ〜ごはんできたよ〜』
『今日はねぇ、ハンバーグだよ、やぶ好きでしょ？』
『やぶ、良い夜を！』
「よい……夜を……」
こんなに覚えてるのに、ヒカルの熱も声も笑顔も睨んだ顔も全部覚えているのに、こうしてひとりでいると何故だろう、本当にヒカルって人間がオレの側にいたのが嘘みたいに思えるんだ――――。
ヒカルに会いたい。
オレが最後に見たのは、小さいバラの木の下で眠る姿。
目を閉じて、まるで死んでるみたいに。
あとで調べて、あのバラはオールドローズと呼ばれるいにしえのバラの種類だって知った。
良く見る大輪のバラよりあの小さな花びら、ヒカルに似合うよな。
「なぁヒカル……そういやおまえはオレに毎回小さな花を持ってきてくれたな」
あれはラブレターなんだなって気づいた時、さすがに顔真っ赤になったんだぜ。
泣いてたヒカルは気づいてなかったようだけど。
今は花のはの字もない。なにもない。
ヒカルもいない。
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SK329(プロフ) - junchan0330さん» コメントありがとうございますっ！キュンキュンなど、普段あまり言われ慣れない感想で照れるやら嬉しいやらです、ありがとうございます！ 続きにはナイスなお友達3人（以外も？）いっぱい出てくる予定です〜 (2018年4月30日 15時) (
レス) id: cdd590872e (このIDを非表示/違反報告)
SK329(プロフ) - marinoさん» コメントありがとうございますっ！ 綺麗で幸せと感じて頂けて嬉しいです…島エンドはずっと考えていたので綺麗に形にできて自分でも良かったなぁなんて思います。やっぱりヒカルさんは強くて真面目な部分もとても素晴らしいですよね！ (2018年4月30日 15時) (レス) id: cdd590872e (このIDを非表示/違反報告)
junchan0330(プロフ) - 最高に幸せな光景でした。ヒカルくんが楽しさを感じる事に遠慮してしまう初さ、ヤブくんの直球で包容力の大きさ、キュンキュンしました！お友達3人もナイスでした(笑)ヒカルくん編も楽しみにしております(^^) (2018年4月28日 13時) (レス) id: 47d1bff47c (このIDを非表示/違反報告)
marino(プロフ) - とても綺麗で幸せなラストに自然と涙が溢れます。長いお話の1話1話がとても楽しくて終わりは寂しいですがまだ光くん編があるのが嬉しいです！薮くんと光くんのラブラブなシーンにときめきケイトとの文通にはほっこりしました(´∀｀*)強くて真面目な光君は私も好きです！ (2018年4月27日 16時) (レス) id: c46cc497fd (このIDを非表示/違反報告)
SK329(プロフ) - junchan0330さん» コメントありがとうございます！ はい、終わりました笑 そしてそのままヒカルさん編に続きます…一度もヒカルさん側からなかったですから私も書きたかったのです。また楽しんで頂けたら嬉しいですっ (2018年4月27日 15時) (レス) id: cdd590872e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：SK329
| 作成日時：2018年4月3日 14時
