特技 : 胸きゅん【青】 (ページ13)

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安「さっ、掴まってて下さいね」

雑にコンビニの袋をカゴに入れると、自転車にまたがって手招きされた。

「わ、私重いけど大丈夫…？」

安「大丈夫です。ってか先輩見るからに軽いでしょ」

ニコニコ笑ってる安田君は本当にいい子なんだろうなぁ。

私が乗った瞬間にパンクとか絶対やめてよね、

黒いブリヂストンに祈りながら、本来は荷物を置くとこにまたがった。

パンクしない、安心。

安「………しっかり掴まって下さい。」

遠慮がちに手をまわしてみれば、意外とガッシリした腰回りで。

年下だけどちゃんと男子なんだなぁ、って…

満月の、とは言えないけど

月夜の中二人乗り、っていう謎の少女漫画展開に純粋にドキドキする。

安「…先輩にくっつかれてめっちゃ緊張してます俺」

「え、？」

安「…どこですか、家」

「あ、そこの角を右で…」

聞き直したけどそれは綺麗に無視された。

もうすぐで家に着いちゃうなーって思ったら、手に力が入ってしまった。

なにこれ。マジで。

年下に振り回されるとか、ぽくないんだけど。

　

……すごい恋してんじゃん、年下に

あんだけ年下は眼中にないとか言ってたくせに。

しかもよりによって、こんな思わせボーイに。

大丈夫、まだ深いトコまで落ちてないから。

安「ここら辺ですかー？」

今ならまだ、

「…あの電柱のとこ」

まだ引き返せる。きっと。

だから安田君、そんな笑顔で手を振らないで。

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