chaosと書いてケイオスと読む～短編集～ (ページ6)

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chaos/zero② ページ6

いつ頃から境推町がこうなったのかはわからない。
何というか、いきなり変わったと言うよりも、少しずつ変わったみたいな感じだ。

…ただやっぱり、あの日を境に変わったのかもしれない。

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今から数年前だったかな。
まだ境推町が普通で、俺たちは只の学生だった。
季節は夏で、夏休みだった。

あの日は、珍しく刻斗が外出してて、帰りが遅かったんだ。

それで頼斗が、「探しに行こう」って。

しばらく探して、見つからなくて。
仕方なく帰ろうとしたら、声がして。
見ると刻斗がこちらに走って来ていた。
これ以上ないってぐらい笑顔で。

そして、赤信号に飛び出した。
そして、トラックが目の前を通り過ぎた。

トラックが通り過ぎた時、道路の向こう側には刻斗が居た。

「ああなんだ、無事じゃないか」

ホッとしてふと違和感に気づいた。

…何かが足りない。
…何かの存在を決定的に忘れている。

………「頼斗」は、どこ？

そして気づいた。
道路に広がる赤い水溜りに。
そして気づいた。
向こうに転がる何かの塊。
そして気づいた。

…「アレ」は、「あの正体」は。

気が付けば俺はその塊に縋り付いていた。
何か叫んでいた気がするけど、もう覚えてない。

「兄ちゃん」

隣から刻斗の声が聞こえる。
見ると生気の抜けた顔をした刻斗が居た。

「頼斗は、どこ？」

俺が覚えているのは、ここまで。