しろい息 [gn] ページ2
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現パロ
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「……さむ」
色とりどりの光が集まる駅前、そのはじっこ。寒い寒いと文句を呟きながら、私は溜息をついていた。
はぁ、と溜息をつくと白色の空気が私の目の前でふわふわと漂って、視界を濁らせる。それを見て今更ながら今は冬なんだと思い、周りの空気が一層冷えたように錯覚した。うん、マジで寒い。
ぎゅぅっと袖口を悴んだ指先で握る。無理無理、寒すぎて無理。下唇を噛みながら眉を顰めても、体から寒さは抜けてくれない。本当、これだから冬は嫌い。
余りにも寒いものだから、摩擦で体をあっためようと体を擦る。そんなことをして悪戦苦闘していると、突如、温かいものが首筋に当てられる感覚がする。
「っ⁉」
「A、何そんなバカみたいなことしてんだよ」
からりとした笑いを含んだ低音が耳を擽る。聞きなれた音でびっくりしてしまったのが少々恥ずかしくなって、声の発生源を見ようとせずに首筋に当てられた物を受け取った。
ホットココアの缶。こいつ完全に私の趣味を分かり切ってやがる。それもそれでなぜか悔しいが、ありがたく受け取る。……しかもこれ私が好きなメーカーのじゃん。
「あ〜……ちょっと遅れたわ、ごめん」
「いいよ別に」
さらりと謝ってさらりと笑う彼。いいよとは言ったが、お前が遅れたせいで寒がってたんだぞ! と声を大にして言ってやりたい。まぁ言ったところでこの寒い現状が変わるわけではないから、無駄なことをいうのは出来るだけ避けて。
かしゅん、と音を立てて缶ココアを開けると、一気に甘い香りと暖かな湯気が漂ってくる。あ〜、缶ココアはこれがいいよね! そう呟けば彼に酒飲みかよと笑われる。
「てかマジで最近寒過ぎね? あり得ないわこんな寒さ」
「ほんとにね〜……。あ、ココア120円だっけ? 払うよ」
「いや別にいいよ、これは俺が遅れた代ね」
「あ、そういうこと?」
「いや別にそういうことじゃないけど」
軽口を叩きつつ、ココアを口に運ぶ。あ、結構熱い。はふ、と吐き出した息はやっぱり白くて、本日2回目の冬を実感する。
「……で、今日はどこ行くの」
「ん〜……ここら辺ぶらぶらする予定だったけど、これじゃ寒すぎるもんな」
う〜ん、と首を傾げる彼。そういえば今日はマフラー巻いてるんだな。やはり彼も寒いみたいで、さっきの私みたいに手をこすり合わせている。
「う〜ん……このまま駅内歩くか。それでご飯食べて帰ろ」
「おっけ〜」
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冬ネタ
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ぴすけっとの遊び場(プロフ) - りゃまさん» うわ〜!!コメントありがとうございます🙇♀️ 毎回お題に工夫を入れたり、言葉選びには気を遣ったりしているので、そのお言葉とっても嬉しいです🙌 これからも頑張ります……!!嬉しいお言葉、本当にありがとうございます!!!! (2021年12月13日 19時) (レス) @page4 id: af576e9416 (このIDを非表示/違反報告)
りゃま - 初めまして、! お話の構成、言葉選び、口調等々、とても好きです! お話の設定された題材等、とても大好きです…… 個人的にとても大好きです、これからも頑張って下さい! (2021年12月13日 0時) (レス) @page4 id: b71400f95b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:健康優良児ぴすけ | 作成日時:2021年12月5日 17時