第漆話、首飾 ページ7
「これで全部、かな」
敦の言葉に鏡花がメモを確認し、頷く。彼等の手には社員の面々から頼まれた物が詰まった紙袋があった。
手が空いていたのは敦と鏡花だけだったので二人で備品や乱歩のお菓子の補充などを買いに来たのだが、思っていた以上に量が多い。
敦が比較的重い方を持っているが、鏡花の方も重たいのだ。現に、少し顔を顰めている。
持とうかと声をかけたが、首を振られてしまった。
中身を落とさないよう、歩きながらも人にぶつからないよう注意する。すると、後ろから「おーい、敦ー」と呼ばれた。
強化と顔を見合わせて振り返れば、片手にビニール袋を持ったAが小走りでこちらに近づいてくるのが見えた。
「Aさん!奇遇ですね。大学は終わったんですか?」
「そ。二人はお使い…にしては多くないか、量」
こればっかりは苦笑するほかない。
Aが鏡花を見る。
すると、ヒョイッと荷物を掻っ攫った。
「女の子が持つ量じゃないでしょ」
「大丈夫」
「んじゃ、等価交換な。これ、俺の昼ご飯。落としたら今日昼抜きになるから、鏡花がこれ守って」
そう言って強化にビニール袋を渡し、「行くぞー」と歩き出す。流れるような動作に呆気にとられた二人は慌てて追いかけた。
こういう男性がモテるんだろうな、と敦は密かに思う。
ふと、Aの恰好に目を向ける。
普段はうずまきで会うので、私服が少し新鮮だった。
カッターシャツに黒のストレートパンツ。灰色のカーディガンを羽織っているが、前は留めていないのが逆にお洒落だ。両手には異能発動避けの黒い手袋が変わらずある。
そして、
「どうかしたか?」
視線に気づいたAが敦の方を向く。
敦は胸元のソレを指差した。
「それって…宝石ですか?」
Aはループタイをしていた。
その中央にある石が、太陽の光に反射して赤く煌めいている。
そうだよ、と頷くAに今度は鏡花が訊いた。
「ルビー?」
「お、よくわかったな」
「…前に教えてもらったことがあるから」
「ひぇッ。高そう」
敦の言葉にからからと笑う。
そして、懐かしそうに目を細めてループタイの紐を指に絡めた。
「綺麗だろ?俺の自慢だよ」
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RANA(プロフ) - ゆかりさん» 遅くなりましたが続編で来ました!続編でも読んでいただけたら幸いです。 (2021年8月1日 21時) (レス) id: 1320bd10d0 (このIDを非表示/違反報告)
RANA(プロフ) - ゆめのあきさん» そう言って頂けて嬉しいです!ありがとうございます (2021年8月1日 21時) (レス) id: 1320bd10d0 (このIDを非表示/違反報告)
ゆかり - 続き待ってます (2021年7月23日 16時) (レス) id: be99c0bfdf (このIDを非表示/違反報告)
ゆめのあき(プロフ) - めちゃくちゃ面白いです! 更新楽しみにしてます! (2021年7月15日 1時) (レス) id: e1a96e1817 (このIDを非表示/違反報告)
RANA(プロフ) - らむくんさん» そうなんです……シリアスをシリアスにできずに本当に申し訳ないです切腹 (2020年8月14日 1時) (レス) id: 37ff009e06 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:RANA | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/my.php?svd=seb
作成日時:2020年8月2日 13時