第肆拾壱話、業火 ページ42
敦が消えるまで、北原はその背中を見続けた。
門の外に出た頃には太宰と国木田も到着するだろう。
執務机に腰掛け、深く息を吐く。
全身が痺れ、鉄で頭を殴られているような頭痛と胃から吐き気が催したが、もう慣れた。異能こそ強いが、その反動は必ず訪れ、こうして身体を蝕む。
だが、あの日味わった“痛み”より、全然マシだ。
敦にかけた異能を解き、立ち上がる。
部屋を出て、リビングルームへと移動した。長い長いテーブルの中央には、古い蝋燭立てがあり、五本の蝋燭が未使用のまま置かれている。
ポケットからライターを取り出し、火をつけた。
ゆらゆらと揺れる五つの火が深紫色の瞳に映る。北原はそれをジッと見つめながら、その火に触れた。
肉が焼けそうになるのはほんの一瞬。触れてしまえば、後は思いのまま。
五つの火は合わさり、炎となった。その炎は意思を持ったかのように、龍の如く畝りながら家の中を駆け巡った。
“業火の炎”とはまさにこのことだろう。
「ふ…ふははっ…」
北原は嗤った。
嗤いながらリビングルームを出た。玄関の中央に行けば、そこら中で火が家の中を燃やす様を見渡す事ができる。
燃やされた天井が崩れ落ちて来たってどうでもよかった。凄まじい速さで温度が上昇し、耐久性のない窓ガラスは次々と破壊された。
両手を広げ、闊歩する。
炎は北原の意思によって動くので、自身が燃やされることはない。この炎は、この家を_北原邸を燃やすためだけに動いている。
「あはっあはははっ…
アッハハハハッハハハハハッハハハハ!!!!」
燃えろ。
もっと燃えろ。
ぜんぶ、ぜんぶぜんぶ、燃えてしまえ。
赤い涙を流しながら、北原は炎の中で嗤い続けた。
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RANA(プロフ) - ゆかりさん» 遅くなりましたが続編で来ました!続編でも読んでいただけたら幸いです。 (2021年8月1日 21時) (レス) id: 1320bd10d0 (このIDを非表示/違反報告)
RANA(プロフ) - ゆめのあきさん» そう言って頂けて嬉しいです!ありがとうございます (2021年8月1日 21時) (レス) id: 1320bd10d0 (このIDを非表示/違反報告)
ゆかり - 続き待ってます (2021年7月23日 16時) (レス) id: be99c0bfdf (このIDを非表示/違反報告)
ゆめのあき(プロフ) - めちゃくちゃ面白いです! 更新楽しみにしてます! (2021年7月15日 1時) (レス) id: e1a96e1817 (このIDを非表示/違反報告)
RANA(プロフ) - らむくんさん» そうなんです……シリアスをシリアスにできずに本当に申し訳ないです切腹 (2020年8月14日 1時) (レス) id: 37ff009e06 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:RANA | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/my.php?svd=seb
作成日時:2020年8月2日 13時