検索窓
今日:19 hit、昨日:3 hit、合計:123,997 hit

第肆拾壱話、業火 ページ42

敦が消えるまで、北原はその背中を見続けた。
門の外に出た頃には太宰と国木田も到着するだろう。


執務机に腰掛け、深く息を吐く。
全身が痺れ、鉄で頭を殴られているような頭痛と胃から吐き気が催したが、もう慣れた。異能こそ強いが、その反動は必ず訪れ、こうして身体を蝕む。

だが、あの日味わった“痛み”より、全然マシだ。


敦にかけた異能を解き、立ち上がる。

部屋を出て、リビングルームへと移動した。長い長いテーブルの中央には、古い蝋燭立てがあり、五本の蝋燭が未使用のまま置かれている。

ポケットからライターを取り出し、火をつけた。
ゆらゆらと揺れる五つの火が深紫色の瞳に映る。北原はそれをジッと見つめながら、その火に触れた。


肉が焼けそうになるのはほんの一瞬。触れてしまえば、後は思いのまま。


五つの火は合わさり、炎となった。その炎は意思を持ったかのように、龍の如く畝りながら家の中を駆け巡った。


“業火の炎”とはまさにこのことだろう。


「ふ…ふははっ…」


北原は嗤った。


嗤いながらリビングルームを出た。玄関の中央に行けば、そこら中で火が家の中を燃やす様を見渡す事ができる。
燃やされた天井が崩れ落ちて来たってどうでもよかった。凄まじい速さで温度が上昇し、耐久性のない窓ガラスは次々と破壊された。


両手を広げ、闊歩する。


炎は北原の意思によって動くので、自身が燃やされることはない。この炎は、この家を_北原邸を燃やすためだけに動いている。



「あはっあはははっ…


アッハハハハッハハハハハッハハハハ!!!!」


燃えろ。

もっと燃えろ。


ぜんぶ、ぜんぶぜんぶ、燃えてしまえ。


赤い涙を流しながら、北原は炎の中で嗤い続けた。

第肆拾弐話、共有者→←第肆拾話、変化



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (156 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
311人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

RANA(プロフ) - ゆかりさん» 遅くなりましたが続編で来ました!続編でも読んでいただけたら幸いです。 (2021年8月1日 21時) (レス) id: 1320bd10d0 (このIDを非表示/違反報告)
RANA(プロフ) - ゆめのあきさん» そう言って頂けて嬉しいです!ありがとうございます (2021年8月1日 21時) (レス) id: 1320bd10d0 (このIDを非表示/違反報告)
ゆかり - 続き待ってます (2021年7月23日 16時) (レス) id: be99c0bfdf (このIDを非表示/違反報告)
ゆめのあき(プロフ) - めちゃくちゃ面白いです! 更新楽しみにしてます! (2021年7月15日 1時) (レス) id: e1a96e1817 (このIDを非表示/違反報告)
RANA(プロフ) - らむくんさん» そうなんです……シリアスをシリアスにできずに本当に申し訳ないです切腹 (2020年8月14日 1時) (レス) id: 37ff009e06 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:RANA | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/my.php?svd=seb  
作成日時:2020年8月2日 13時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。