第弐拾弐話、静観 ページ23
国木田は襟元を整え、咳ばらいを一つする。気を取り直し、改めて広津の方を向く。
「では、早速本題に入らせてもらう」
横にいた太宰はふらりと離れ、すぐ近くのコンテナに寄りかかり、目を瞑った。進行は国木田に任せるつもりらしい。
重い空気が三人を包んだ。
「海外から流入してきたある二つの組織が殺し合いをしているのは知っているな」
「勿論だ」
「ならば、何故お前たちは何もしない。裏社会で好き勝手されて困るのは、お前達ポートマフィアなんだろ」
広津は目を伏せ、「確かに」と肯定した。
やけに答え方があっさりしている。
太宰の言う通り、何か裏があるに違いない。
じゃあ何故、という目を向ける国木田に、広津はゆっくりと口を開いた。
「我々は手を出さないことにした」
「だから何故」
「ある男に言われたからだ」
広津によると、ポートマフィアはこの事態にいち早く気づき、その対処に当たろうとしていた。だが、その前に"ある男"から接触があった。
そして、「手を出さないでくれ」と言われたらしい。
そこで言葉が切れた。
国木田はいぶかし気に顔を顰める。
「それだけでお前達は手を引いたのか？」
「真逆」
広津の代わりに答えたのは太宰だ。
目を細めながら、いつもの笑みを浮かべている。
「森さんが直接出たんだ。それだけで済むはずがない」
ふらふら。へらへら。
雲よりも、ましてや空気よりも掴めないのが太宰治という男だ。
この男を一時期育てたのは森鴎外であり、ポートマフィアで過ごしていた時期がある。どう行動するか、予測がつく。
太宰の黒い瞳に広津が映る。はぐらかせるつもりは一切ない。
二人は古い付き合いだ。
降参、というように広津は苦笑する。
「男に会った時会話を録音してある。首領も、聞かせた方が話が早いと」
胸元のポケットから
「彼はこう名乗っていた。
＿＿"執行者"だと」
ボタンを押す音が、やけに響いて聞こえたのは気のせいだろうか。
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RANA(プロフ) - ゆかりさん» 遅くなりましたが続編で来ました！続編でも読んでいただけたら幸いです。 (2021年8月1日 21時) (
レス) id: 1320bd10d0 (このIDを非表示/違反報告)
RANA(プロフ) - ゆめのあきさん» そう言って頂けて嬉しいです！ありがとうございます (2021年8月1日 21時) (レス) id: 1320bd10d0 (このIDを非表示/違反報告)
ゆかり - 続き待ってます (2021年7月23日 16時) (レス) id: be99c0bfdf (このIDを非表示/違反報告)
ゆめのあき(プロフ) - めちゃくちゃ面白いです！ 更新楽しみにしてます！ (2021年7月15日 1時) (レス) id: e1a96e1817 (このIDを非表示/違反報告)
RANA(プロフ) - らむくんさん» そうなんです……シリアスをシリアスにできずに本当に申し訳ないです切腹 (2020年8月14日 1時) (レス) id: 37ff009e06 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：RANA
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/my.php?svd=seb
作成日時：2020年8月2日 13時
