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第参話、手袋 ページ3

シン、と静まる店内。
敦以外が俯き、机を見つめている。


「え…あの……」

「そうだよな。気になるよな」


愁いを帯びた表情で笑うA。

乱歩はそんなAの肩に黙って手を置く。


気まずい空気が流れ始めた。


敦の顔がサァッと青くなる。
やっぱり聞いちゃいけなかったんだ、と後悔する。


「すっすみません!そうですよね!誰しも言いたくない事が一つや二つありますよね!!」


慌てて謝罪するが、俯く姿は皆変わらない。

これはもうだめだと諦めかけた時、笑いをこらえずに噴き出した声が妙に響いた。


敦はゆっくりとその人物を見る。
肩をプルプルと震わせる太宰がいた。


「敦くんっ、本当に君は……ぐふッ」

「太宰やめろ。Aと乱歩さんも」


国木田が呆れたようにため息をつく。

見れば、Aも腹を抱えながら肩を震わせており、乱歩に限っては素知らぬ顔で残りの咖喱飯(カレー)を食べていた。


自分が騙されたと分かるまで時間はかからなかった。


「揶揄いましたね…!」

「ごめんって。敦の反応が面白いもんで…つい、な」


笑うのを我慢していたからか、目には薄っすら涙も浮かべていた。


全員の様子からして、手袋をしているのはそう思い理由ではないらしい。その部分に関しては心の中でホッと息をつく。


Aはどう説明しようか悩んでいたが、「直接見せた方が早いんじゃない?」と言う乱歩の提案によって迷いなく右手の手袋を外す。

露わになったその手で空になったカップにそっと触れた。


「敦。このカップどうなると思う?」

「え?うーん……消える、とか」


以前テレビで見たマジックショーを思い出しながら言う。


Aは正解とも不正解とも言わない。
代わりにというように、そのカップがひとりでにふわりと浮いた。

第肆話、異能力→←第弐話、名探偵



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RANA(プロフ) - ゆかりさん» 遅くなりましたが続編で来ました!続編でも読んでいただけたら幸いです。 (2021年8月1日 21時) (レス) id: 1320bd10d0 (このIDを非表示/違反報告)
RANA(プロフ) - ゆめのあきさん» そう言って頂けて嬉しいです!ありがとうございます (2021年8月1日 21時) (レス) id: 1320bd10d0 (このIDを非表示/違反報告)
ゆかり - 続き待ってます (2021年7月23日 16時) (レス) id: be99c0bfdf (このIDを非表示/違反報告)
ゆめのあき(プロフ) - めちゃくちゃ面白いです! 更新楽しみにしてます! (2021年7月15日 1時) (レス) id: e1a96e1817 (このIDを非表示/違反報告)
RANA(プロフ) - らむくんさん» そうなんです……シリアスをシリアスにできずに本当に申し訳ないです切腹 (2020年8月14日 1時) (レス) id: 37ff009e06 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:RANA | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/my.php?svd=seb  
作成日時:2020年8月2日 13時

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