第拾伍話、対等 ページ16
けれど、その心配はいらなかったようだ。
Aは「真逆」と微笑む。
「すぐに思いつくのが食べ物か珈琲ってだけです。それに、店長の淹れる珈琲めちゃめちゃ美味いんで、飲みたいんですよ。今の時間なら他の人達も降りてきてると思います」
そう言われ、脳内に探偵社の面々が浮かぶ。
今頃、店長お手製の珈琲を嗜みながら談笑している事だろう。
与謝野は一笑し、「それじゃ、妾達も混ぜてもらおうか」と足を早めた。
お寿司やローストビーフ、ピザ、キッシュなど多くの料理。お茶やジュースから
倉庫から出してきた長机にはそれらが並べられ、社員は取り皿を手に好きなものを取っていた。
その中にはAも混じっており、鮪の握り寿司を堪能している。
「うんまっ。やっぱ寿司ネタは鮪だな」
「Aさん王道ですねぇ」
「鮪は期待を裏切らないから。そういう潤は何が好きなんだ?」
「僕は卵です」
「魚じゃねえのかよ」
Aのツッコミに「美味しいので」と谷崎は笑顔で返す。そんなお兄様も素敵ですわ、とナオミが抱き着く光景は、いつしか微笑ましいものへと変わっていた。
うずまきを訪れたAと与謝野は、予想通り休憩していた探偵社員の中へと混ざった。談笑の中で以前の依頼主から電話があり、探偵社に大量の料理と飲み物が贈られたのだ。
急ぎの仕事もなかったので、すぐさま招宴をすることになり、そこにAも呼ばれ、現在に至る。
「A〜、これ開けて」
もぐもぐと寿司を頬張るAの下へ、乱歩がラムネ瓶を持って現れた。贈られた中にはラムネが十本もあったらしい。
これで三本目のはずだが、飽きないのだろうか。
Aが慣れた手つきでラムネ瓶を開け、「ほらよ」と乱歩に渡す。乱歩は満足げに笑い、それを美味しそうに飲む。
その光景を見ていた敦は和んでいた。
「本当に仲いいですよねえ。兄弟みたいだ」
「この場合、乱歩さんが弟に見えちゃうけど」
谷崎の言葉に数人が頷く。
見た目や普段の言動で幼く見えてしまうとしても、乱歩は社の誇りであり要。一番の古株であるが故に、福沢を除いて回りは年下の者が多く、皆敬語で接する。
その中で、Aの存在は大きい筈だ。
社の先輩としてでなく。名探偵としてでなく。
"江戸川乱歩"という一人の人間、そして友人として対等に話している。
あの出来事がなければ、こうして笑い合うこともなかっただろう。
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RANA(プロフ) - ゆかりさん» 遅くなりましたが続編で来ました!続編でも読んでいただけたら幸いです。 (2021年8月1日 21時) (レス) id: 1320bd10d0 (このIDを非表示/違反報告)
RANA(プロフ) - ゆめのあきさん» そう言って頂けて嬉しいです!ありがとうございます (2021年8月1日 21時) (レス) id: 1320bd10d0 (このIDを非表示/違反報告)
ゆかり - 続き待ってます (2021年7月23日 16時) (レス) id: be99c0bfdf (このIDを非表示/違反報告)
ゆめのあき(プロフ) - めちゃくちゃ面白いです! 更新楽しみにしてます! (2021年7月15日 1時) (レス) id: e1a96e1817 (このIDを非表示/違反報告)
RANA(プロフ) - らむくんさん» そうなんです……シリアスをシリアスにできずに本当に申し訳ないです切腹 (2020年8月14日 1時) (レス) id: 37ff009e06 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:RANA | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/my.php?svd=seb
作成日時:2020年8月2日 13時