【文スト】参謀とは。黒編【DEAD APPLE】

参謀の勘は当たりやすいとは。 ページ10

「霧の発生直後に発見された変死体です。吸血の異能者で、英国マフィアの一員でした」

　
吸血鬼ってのもあながち間違っちゃいない。


他にも三ヶ国の写真が映された。
どれも霧が発生した直後に異能者の変死体が発見されているという。

その数、今見た4人を含め128件。
実際の数はその3倍以上だと言われている。


「お察しの通り、彼等は自身の異能で死んでいます。この事からこの事件は、"異能力者連続自 殺事件"と呼ばれています」


自 殺、ねぇ。
頭の片隅で「素敵な川じゃないか」と言って川に飛び込む包帯男が流れた。

…面倒事にならなきゃいいけど。


「そして、この事件の首謀者は既に明らかになっています」


スクリーンに男の写真が映る。


相変わらず真っ白で、その中に不気味に浮かぶ赤い瞳。
8年前と全く変わらない風貌。

"霧"という単語が出てから予測はついてた。
というか、判っていた。


「澁澤龍彦、通称"蒐集者(コレクター)。29歳。8年前の竜頭抗争を引き起こした人物でもあります」


中也の表情が険しくなるのが判った。
他の人達も目の色が変わり、隠しきれない殺気が伝わってくる。


四方八方死体の山、銃弾の嵐、血の海＿＿一般人も巻き込んだ横浜裏社会史上最も最悪の抗争。


マフィアの立て直しにも結構な時間が掛かった。


8年が経った今、再びあんな地獄絵図を見るのは御免被る。


「現在、澁澤は横浜にいることが確認されています。その澁澤を、裏ルートで招き入れた人物も特定されました」


カチリ、と別の写真が移される。

うーん嫌な予感しかしないなぁ。


「元ポートマフィア幹部、現武装探偵社社員＿＿太宰治」


ガンッと勢いよく机に伏せた。

当たっちゃった当たっちゃったわーいわい、じゃねぇよなんもわーいわいじゃないわ。
嫌な予感が当たっちゃったよー。なんでこう面倒事になるかな。


一人盛大に長い溜息をついた。


部屋全体が一気に騒がしくなる。


こりゃ収拾つかないな、なんて思っていると「困ったねぇ」と何処か呑気な声が妙に響いた。
全員が口を閉じ、声の主へ視線を向ける。

私は顔を上げて隣を見る。

首領は、両手を組んだ奥でほくそ笑んでいた。

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