【文スト】参謀とは。黒編【DEAD APPLE】

序章は終幕、本章はこれから、とは。 ページ42

No side


敦の声で我に返る。

目の前には突きつけられた刃。それをコンクリート片に深く突き刺し受け止め、なんとか鏡花に届くのを防いだ。


「額の赤い結晶を狙うんだ！」


敦の言葉に、鏡花は素早く襷を解き地面を蹴る。

襷を『夜叉白雪』の首に回し、背中合わせに自分の体重をかけて締め上げる。そして身動きが取れなくなった『夜叉白雪』の額目掛けて、短刀の柄部分で結晶を打ち砕いた。

破片が煌めく。
赤い光は『夜叉白雪』を包み込み、消えた。


直後、背後から白虎が襲い掛かってきた。

不意打ちに避ける事が出来なかった敦はそのまま咥えれ、放り投げられる。地面に打ち付けられ痛みが走った。

だが敦は身体に鞭を打ち、上半身を起こす。虎は跳躍し、再び敦に襲い掛かろうとした。


大きな口を開け、鋭く光る牙が剥く。
開いた口に向けて、敦は絶叫と怒号が混じる咆哮を上げ、無我夢中でコンクリート片を突っ込む。そして更に蹴り込み、突き刺さったままだった『夜叉白雪』の刀が深く突き刺さった。

上顎を貫き、同時に赤い結晶が砕かれる。

結晶は粉砕し、赤い光を帯びて白虎と共に消えた。


静けさが戻った。

鏡花は敦に駆け寄り、「傷は？」と怪我の様子を見ようと隣にしゃがむ。


「大丈夫…異能が戻れば虎の治癒能力で治る」


漸く終わった闘いに、二人は安堵のため息をつく。


だが、本当の闘いはまだだ。


ふと、鏡花が視線を上げた。
敦は鏡花の視線を追い、息を飲む。


深い霧の奥から、骸砦が姿を現した。


其処には首謀者である澁澤が居る。

澁澤を倒さなければ、この闘いは終わらない。


「太宰さんを助ければ、きっと何とかしてくれる」


そんな淡い期待を抱いた。

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