【文スト】参謀とは。黒編【DEAD APPLE】

勝てない相手とは。 ページ38

No side


風導管(ダクト)に囲まれた中、敦と白虎は対峙していた。

狭い通路を駆け抜け、広い通りに出ると振り返り白虎へ銃を撃つ。しかし凡ての弾が弾かれ、どれも当たらない。


白虎は尾を上げ威嚇し、敦に飛び掛かった。

咄嗟に避けるが、鋭い爪が左腕を掠める。
血が流れ、白生地が真っ赤に染まった。


これが避けていなかったら左腕だけでは済まされなかっただろう。


「如何すれば奴を倒せる…」


左腕を抑えながら、白虎が着地した先を見る。

すると、虎の背で赤く輝く結晶が目に入った。


「…あれをやればいいのか？」


確証はない。
が、それしか思いつかない。


牙を剥く白虎の結晶を銃で狙う。
しかし、銃を扱う事に慣れてない敦が正確に当てる事は不可能だ。


一発、二発、三発と外してしまう。

四発目を撃とうとした時、かちゃりとだけ音が鳴って弾は出ない。弾切れだ。


「くそっ！」と思わず銃を地面に投げ捨てる。
銃以外に武器はない。



＿＿矢っ張り、自分の異能に勝てる人間なんていないんだ





一方、鏡花も『夜叉白雪』と刃を交えていた。

刃と刃がぶつかり、火花を散らす。


胸元では、母の形見である携帯が揺れている。その重みがこんなにも伝わってくるのは、後にも先にもない。


彼女の異能であり、親の仇である『夜叉白雪』。
『夜叉白雪』を倒せば彼女の元へと戻り、再び共に刀を振るう事になるだろう。つまり、鏡花は夜叉となる。

『夜叉白雪』を赦した事もないし、その主である自分自身を赦した事もない。

けれど『夜叉白雪』を倒さなければ、首謀者である澁澤を倒す事が出来なくなってしまう。


複雑に絡み合った思いが、鏡花の中で鬩ぎ合う。


『夜叉白雪』の刀が、銀色の弧を描いて襲い掛かってくる。一撃目を短刀で受け流し、二撃目三撃目を躱す。


その時、携帯の紐が浮き、それに刃が届いて切れてしまった。

携帯は虚しく地面に転がっていった。

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