【文スト】参謀とは。黒編【DEAD APPLE】

安全の保証がない車とは。 ページ26

No side


車の急な右折により、敦と鏡花の体が横に傾いた。

それに構わずAはアクセルを踏み道路を爆走する。


行く手を阻むかのように、目の前に黒柱が現れた。地面から突き出してきたのだ。

速度を落とすこと無くハンドルを回し躱す。
敦と鏡花の体が再び傾く。黒柱の攻撃と回避は続く。


何とか取っ手に捕まり、体を起こした。


「なっ、何が起こって＿＿うわッ！！」

『舌噛むよ』


キーッと耳障りな音が響く。


確かに、次口を開けば確実に噛む。
敦は必死に取っ手にしがみついた。


せめて外の状況だけでも把握しようと窓の外を見た。
新幹線なんて比じゃない。次々と過ぎていく景色に目が回りそうだ。


ふと、後ろに目を向けてみた。
するとこの車をジッと見つめる黒い影。

否、影ではない。その姿は遠ずとも見え、見覚えがあった。


光が無いにも関わらず煌めく雫のピアス。それを付けている人物は敦の知っている中で一人しかいない。
けれど唯一違うのは、瞳で毒々しく光る赤い結晶だ。


「あれってAちゃんのいの…い゛っ！」


ドリフトし、タイヤが悲鳴を上げる。

同時に敦は舌を噛み、痛さに口元を抑えた。


建物の影に隠れ、異能の姿が見えなくなった。そのお蔭か、黒柱の攻撃が止み車は真っ直ぐ突き進む。


「た、助かったぁ…」

『まだだよ』

「え」


胸を撫で下ろす暇も与えずAは告げる。


車の天井からガンッと音が聞こえた。


「来た」


鏡花が静かに視線を上に向けた。


直後、敦の頭上から刀が突き破ってきた。

間一髪でそれを避ける。


見てみると、その刃は『夜叉白雪』の刀のものだった。恐らく車の上に乗っているのだろう。


『夜叉白雪』は刀を引き抜き、再度天井を貫いた。
狙いは鏡花だ。

鏡花はそれを避け、刀がシートに突き刺さる。


『出て！』


Aの鋭い声に敦は「えっ？」と聞き返した。が、鏡花に首根っこを掴まれてすぐに意味を理解した。


瞬きした時には、車の外に放り出されていた。





＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝


スリルを感じてくれたらなぁと思いながら書きました。気持ちはジェットコースターです。

突然降ってきた人とは。※題名変更→←変わらない景色とは。

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す