【鬼滅の刃】鬼狩りの演者。第弐部 (ページ3)

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肆拾捌幕ページ3

『私がですか？』

「はい。ぜひお願いしたいんです」

ある昼下がり。

しのぶにお使いを頼まれて帰ってきたAは、きょとんとする。
理由は、炭治郎達の"全集中の呼吸・常中"を教えてあげてほしいと言われたからだ。

"全集中の呼吸・常中"とは、名の通り全集中の呼吸を四六時中行うこと。短時間で行うのと常に行うとでは天地程の差が出る。

柱はもちろんのこと、しのぶの継子であるカナヲやAは所得済みだ。

「Aさんは教えるのが上手ですから。それに、彼等とは共に鬼を倒して仲がいいじゃないですか」

『はあ…まぁ、そうですけど』

同期の方がいいのではないか、という疑問が浮かびかけたが彼等の同期はカナヲと玄弥だ。
カナヲは自ら話すことはないし、玄弥はそもそも呼吸が使えない。消去法でいくと、少し先輩にあたる同い歳のAに辿り着く。

けれど彼等とはここ数日会っていない。それに鬼を一緒に倒したといってもそれまでで、別に仲がいいというわけではないのだが。

だからといって断る理由も見つからない。

任務があるわけでもないし、やることと言ったら鍛錬やこういったお使いくらい。彼等に教える時間は任務がこない限り無限にある。

『…わかりました。教師役ですね。演じるのはかなり久しぶりですが、お引き受けします』

「ふふ。ありがとうございます」

しのぶはニコニコと笑みを浮かべる。

直後、バタバタと廊下の方で足音がすると同時に三人の気配が近づいてきた。

それはスパーンッと勢いよく扉を開け放つ。

「A！常中を教えてくれるってしのぶさんから聞いたんだけど本当！？」

「助けてAちゃあぁぁあああん！！もう肺が痛いよぉぉおお訓練辛いよぉおおおお」

「おい雪女！！俺と勝負だ！！！」

上から炭治郎、善逸、伊之助だ。
それぞれが言いたい放題で本当に騒がしい。

少し固まるAに、相変わらず笑みを絶やさないしのぶ。

Aはそっとしのぶを見た。

『もしかして私、嵌められました？』

「嵌められた、だなんて。そんなわけないじゃあないですか」

『ですよねえ』

ふふふ、あはは、と笑う。

悪い言い方をすれば、もしかしなくてもAは嵌められた。
しのぶはAが断らないのを知って、事前に彼等に言ったのだ。

ちらり、と三人に目を向ける。

色んな意味が詰まった期待の目がギラギラと向けられていた。