【鬼滅の刃】鬼狩りの演者。第弐部 (ページ12)

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伍拾漆幕ページ12

目を開けると、日本家屋の天井が見えた。

部屋の明かりは点いておらず、薄暗かった。

＿寒い。

どうやら畳の上で寝てしまったらしい。体を起こし、窓の方に視線を向ければはらはらと降る雪が見えた。

次に、辺りを見渡す。
壁沿いには本棚があり、その横には机と座布団がある。それ以外に家具や物はなく、殺風景な部屋だ。

ふと、手に何かが当たる。
"シェイクスピア"と書かれた台本が見開かれた状態で置かれていた。

＿私、何してたんだっけ。

「お嬢様」

背後から聞えてきた声にハッとして、我に返る。
振り向くと、老婆が心配そうに顔を覗き込んでいた。

「大丈夫ですか？なにやらボーッとなされていましたけれど」

『…サチさん』

老婆＿サチは「失礼しますね」と部屋に入り、Aの額に手を当てる。どうやら熱があるかどうかを確認しているらしかった。

熱がないとわかると、ホッと胸を撫で下ろす。

「よかった。熱を出されては、せっかくのお誘いを断る事になってしまいますからね」

そう言うなりAの髪や服を整える。

改めて自分の恰好を見ると、余所行きの服装だった。髪には簪がささり、押し入れから取り出した上衣を羽織らされる。

「外は寒いですから、しっかり防寒しないといけませんよ。明日は本番ですから、風邪を引いたら主様に怒られてしまいます」

"本番"

"主様"

妙な違和感を感じながら、「そうだね」と微笑んだ。

それから、軽い化粧を施された。Aの白い肌には、薄い赤紅でさえよく映えている。

礼を言うと、サチは嬉しそうに笑い、玄関へ行くよう促した。

言われるがまま玄関へ向かう。
置かれている状況をまだ理解していないまま、長い廊下を進んでいく。角を曲がると、玄関には先客がいた。

Aに気づくと、ぱあっと表情が明るくなった。

「やっと来た。寝てるんじゃないかと思って、迎えに行こうとしてたんだ」

Aと同じ、淡い水色の髪が印象的な少年。

顔も似ていれば、その柔らかな笑みもそっくりだ。
違うのは身長と、瞳の色＿薄い灰色の瞳。

ああ、と思い出す。
今日は彼と、祭りに行く約束をしていたのだ。

『待たせてごめんなさい。優真(ゆうま)兄様』

「今はお父様とお母様はいないから、そんな堅苦しい呼び方しなくてもいいんだよ」

そう苦笑し、Aの頭を優しく撫でる。
Aは頷き、再び呼ぶ。

『うん。お兄ちゃん』

すると、優真は嬉しそうに笑った。