【鬼滅の刃】鬼狩りの演者。第弐部 (ページ2)

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肆拾漆幕ページ2

時は過ぎて日は沈み、夕焼け空にカラスが悠々と飛んでいるのが見える。

その下を歩くAともう一人＿鳴悲嶼。

風呂を借りて屋敷を出る時、しのぶに用があるからと悲鳴嶼と共に蝶屋敷へ向かうことになった。

「君のような隊士が増えるといいと、私は思っている」

『いやいや。私は動いていないと落ち着かない質なだけですよ』

二人の間にあるのは当たり障りない会話。
内容は先ほどの滝行のことだったり、最近の任務のことだったりといったところだ。

そうしているうちに蝶屋敷の前まで来た。

門を潜りそのまま進むAに対し、悲鳴嶼は門を潜った途端足を止める。

どうしたのかと視線を向けた時、

「なぜ柱の件を断ったのだ」

数珠の音が一つした。

柱合会議にて、次世代の柱は誰になるかという議題になった。

もちろんAの名前が上がった。階級ともに功績も問題はなく、柱も産屋敷も認めている。

ただ一つの問題点＿A自身が柱になろうという気がない点を除いては。

次世代の柱にならないか、という話は炭治郎の件で呼んだ時に産屋敷がAに話した。が、Aはそれを丁寧に断っている。

「お館様を含めた私達は、君を認めている」

『私が私を認めていません。それに』

Aはなかなか掴めない、降り落ちる雪のように笑った。

『私は、柱を演じることができません』

ぴくりと悲鳴嶼の眉が動く。

Aはあらゆる物事を"演技"に置き換えている。悲鳴嶼が知っている限りでは、与えられた役を完璧に演じてきている。

"完璧よりも完璧に"

それを座右の銘とし、いつも口にしている言葉だ。

そんな演者ができない(・・・・)と断言した。
演じれない理由は不明だが、やはり柱になるつもりはない。

『先に中に入って、しのぶさんを呼んできますね』

優雅に一礼すると背を向けて玄関を開け、屋敷の中に入っていった。

夕焼け空はいつの間にか群青色に変わり、夜の訪れを知らせる。

遠くなっていくAの背中を、盲目の悲鳴嶼はまっすぐ見つめていた。