【文スト】参謀とは。7

旧き過去と現在とは。 ページ29

No side


福沢と森は、古い洋館にいた。

『共食い』を止めるには、自分達が闘い何方かが死なねばいけないと判断した二人は、連絡も示し合わせもなく此処に集った。


そして激しい戦闘が繰り返されいた。


森の異能＿＿『ヰタ・セクスアリス』であるエリスは、最早ただの少女ではない。


ダンッと地面に巨大な注射器を打ち付ける音が響いた。
福沢はそれを素早く避けた直後、眼前に注射器が飛ぶ。

手に持つ刀の柄を親指で上げた。


再び鞘に納めた時には、注射器は凡て真っ二つに斬られエリスの背後にいた。


抜いた刀身すら見えない程の神速抜刀術。
流石は、元政府最強の暗殺剣士"銀狼"と詠われた人物だ。


彼等は十二年前に出逢った。
福沢は森の護衛役として、森は福沢の守護人として。


性格も違う。
立場も違う。

けれど共闘した時には決まって敵無しだった。


何度も対立し、衝突し、時を得て組織を創り長となった。
護るものも増えた。


巨大な注射器と刀が衝突する。
互いの力が鬩ぎ合う。

一瞬、福沢が圧されそうになったが、雄叫びを上げながら刀を振りかざした。

銀刃がエリスの身体を、森の身体を斬る。


「ごめん、リンタロウ...」


エリスは膝をついた森の方を向き、頬に手を当てた。


「先に、向こうで待ってるね」


そう言い残して、砂のように消えた。


「矢張りこうなりましたか...済まないね、エリスちゃん」


森は力なく笑う。
こうなることを判っていたようだ。


福沢が鞘に刀を収めながら淡々と言い放った。


「これが、"三刻構造"の終焉だ」


"三刻構造"

昼を軍警と特務課が、
夜をポートマフィアが、
夕刻を探偵社が取り仕切り街の均衡を保つためにと創造された構想。

これを実現した後に、発案者である夏目漱石は引退した。


凡てを三人に任せて。


「福沢殿。死ぬ前にお伝えしたい事が」


顔を俯かせたまま、森が囁く。


「探偵社とマフィアは等価ではありません。福沢殿が死ねば闘争は終結しする。然し、私が死ねばマフィアは制御不能の報復に走り、より血腥い組織戦となります」


福沢が弾かれたように森の方を向く。
その一瞬の隙を、森は見逃さなかった。


それは静かに首筋を切り裂いた。
福沢が倒れると同時に、森はゆっくりと立ち上がる。

血がじわじわと床を侵食していった。

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