【文スト】闇の支配人とは。6

花びらが散り終わりに近づくとは。 ページ22

No side


中也に触れた刀が急に重くなった。

三船は咄嗟に離す。
すると刀がコンクリートの地面に落ちめり込んだ。


驚く暇もなく中也の回し蹴りが来る。

体を仰け反らして躱し、そのまま地面に手をついて後ろに飛び地面蹴った。


「あーあ、ボクの刀が...」


言葉では残念そうだが、表情はそうでもなさそうだ。

その場にしゃがみ込んで地面にめり込んだ刀を観察するかのように前屈みになった。


「俺の異能は触れたもののベクトルを操る。武器なんざ意味ねェんだよ」

「へぇ、そりゃ凄い」


「よっ、と」と言って立ち上がる。

そして屈伸をしたり伸脚をやったりと準備体操をし始めた。
しかもちゃんとかけ声付きである。


中也の額に青筋が浮かんだ。


「手前、巫山戯てンのか？」

「真逆。キミから逃げるには準備体操しなきゃと思ってね〜」


そう言って指の骨を鳴らした。


「俺を殺るンじゃねぇのかよ」

「殺るよ。けどそれは今じゃなくてもいい」

「ハッ、嘗められたモンだなァ！」


中也は拳を構え、地面を蹴って三船に突っ込んだ。

三船は横へずれて中也の拳を躱す。
が、すぐに蹴りが飛んできた。

それも体を捻って紙一重で躱した。

そんな状態が何分も続く。


中也は苛立ちを含めながら拳を雨のように降らせた。


「おい当たれよ！」

「無茶言わないでよ〜、ボク痛いのヤだもん」

「太宰みてェでムカつく！」

「ちょっと中也、そんな奴と一緒にしないで欲しいのだけど！」


すかさず太宰が話の間に入った。


「大体何をしているんだい？"兄貴"とか大口叩いていた癖に、今の君は犬がボールを追いかけているようにしか見えないね。あと私が兄だから、脳筋が兄だとAが可哀想」

「マジで弾当たって死ね！今すぐ死ねッ！」


いつもの言い合いが始まってしまった。
お互い敵に攻撃を仕掛けながら。

本当に戦闘中なのか、と疑いたくなる。


やりとりを見ていた三船はクスリと笑った。


「仲良いね」

「どこがだ！」

「ボール役は飽きてきたから、そろそろいっか」


ピシッと中也の拳が止まった。

否、止まったのではない。三船が片手で中也の手首を掴んでいたのだ。




いーちっ





「なんだこれッ、離せねェ...！てめ、離しやがれ！」

「やーだ」





にーいっ





『中也！早く離れてッ！』





Aの焦った声が聞こえた。





さーんっ





「ざーんねんでした」


三船がニタァと笑う。

直後、中也は呻き声を上げて膝から崩れ落ちた。

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