弐幕 ページ5
男をしっかりと抱えたまま、地面に降り立った。
音一つない。まるで、はらはらと降る雪のように。
少女はゆっくりと、男に負担をかけないように地面に寝かせた。
動作一つ一つの優美さに、煌めく淡い水色の髪に、思わず見惚れてしまう。特に善逸には天使に見えていた。
男が寝かされた事で、血に濡れた足や髪が少女越しに覗く。
子供達が青ざめた表情で目を瞑った。
それで漸く炭治郎も我に返り、駆け寄る。少女の隣に立ち男の様子を見るが、目を閉じピクリとも動かなかった。
助けられなかった悔しさに拳を強く握りしめた時、屋敷から雄叫びが轟いだ。
空気を震わせて伝わってくる、怒号にも似た声。その後再び鼓の音が数回聞こえると、ぱったり止んだ。
『へえ、鼓かあ。久しぶりに聞いたな』
場にそぐわない軽快な声だが、おかげで張り詰めていた空気が和らぐ。
少女は立ち上がり、炭治郎の横を通り過ぎる。
ハッと振り返ると、ガタガタ震える子供達の前でしゃがんでいた。
『大丈夫かい?怖かったろうに。彼は知ってる人なのかな?』
穏やかな声色に安心したのか、二人の震えが治まる。
そして小さく首を横に振った。
「ち、違う…兄ちゃんは、柿色の着物だ……」
『ふむ、そっかそっか。言ってくれてありがとう』
少女は立ち上がると炭治郎の方に身体を向けた。
素顔がはっきり見えた。
色白の端正な顔立ちで、硝子のような銀色の瞳だ。
少女は炭治郎と目が合うと、にこりと笑って歩んできた。
『こんにちは。君達は鬼殺隊員だよね?』
炭治郎と善逸を交互に見る。
二人は顔を見合わせた後、こくりと頷く。
「君も?」
『そうそう。兎氷A、よろしく』
Aに続いて炭治郎と善逸が自己紹介する。善逸に至っては「結婚しよう」と言ったが、華麗に無視した。
どうやら彼女も任務で此処に来たらしい。
炭治郎は軽く状況を説明した。最優先事項は鬼の退治と兄の救出なので、亡くなった男は後でちゃんと埋葬しようという事になった。
「よし、じゃあ行こう!」
『お〜っ』
もう一人の声が聞こえない。前に進む二人の間がぽっかりと空いている。
後ろを向くと、善逸の顔面は蒼白だった。
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RANA(プロフ) - 鴉蒼さん» ご指摘ありがとうございます。いつも注意しながら書いているのですが、時々見逃してしまいますので、またあったら教えてくださるとうれしいです。 (2020年4月6日 12時) (レス) id: 37ff009e06 (このIDを非表示/違反報告)
鴉蒼 - 富岡さんになってますよ…冨岡さんです… (2020年4月6日 9時) (レス) id: 96316f1cbb (このIDを非表示/違反報告)
サラダ(プロフ) - RANAさん» 教えてくれてありがとうございます!!楽しんで読んでます!更新頑張ってください! (2020年2月22日 20時) (レス) id: a856ca8d9b (このIDを非表示/違反報告)
RANA(プロフ) - サラダさん» "うすい"と読みます!!読みにくくてすみません (2020年2月22日 20時) (レス) id: 1320bd10d0 (このIDを非表示/違反報告)
サラダ(プロフ) - 夢主の名字の読み方がわからないのですが、、、出来れば教えてください!!! (2020年2月22日 20時) (レス) id: a856ca8d9b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:RANA | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/my.php?svd=seb
作成日時:2019年11月19日 0時