捌幕 ページ11
_さて、どうしようか。
Aは横目で兄妹を見る。
炭治郎が心配なのだろう。只でさえ今日一日で散々な目に合っているというのに、優しい子達だなあと他人事のように思う。
このまま沈黙、緊迫状態が続くのは別に気にしないAだが、清やてる子は無意識に過度な疲労を感じている。
そこでAは、「そうだ」と人差し指を立てた。
『面白い昔話があるけど、聞く?』
「むかし、ばなし?」
突拍子もない事を言い出すAに、目を丸くする二人。
気にせずに言葉を続けた。
『昔々あるところに、__』
大正コソコソ噂話、その弐。
Aは"語り"がとても上手い。
昔話だけでなく、物語全て、Aが語れば単なるお話がとても面白く感じる。聞き手は例外なく夢中になる。
それだけ、一文字に、言葉に、一句に、細かな感情の付け方や協調の仕方が出来ているのだ。
そしてAはそれを、完璧に記憶し、独自の表現で物語を語る。なんなら自作の物語を語る事だって出来る。
朝飯前だ。
実際、その昔話は清やてる子にとって聞き慣れてもあり読み慣れたものだった。が。Aが語り始め物語が進むと、今までにない興味や面白さが底から湧き上がってきた。
緊張は上手く解れ、今や物語に夢中だ。
語り終わると、二人はパチパチと手を叩く。
「すごくおもしろかった!」
『それはよかった』
「そういうの、朗読っていうんですよね。本ないけど。Aさん、もしかして妹とか弟いましたか?」
『兄が一人、いたよ。親戚の方に下は居たけれどね』
"いた"
それが過去形であると、二人は気付かない。
否、気づくよりも先に、予想外の出来事が起こった。
清の手にあった鼓が突如として消えたのだ。欠片を残すことも無く、まるで霧がフッと消えるように。
「えっ、な、なんで…!」
『落ち着いて、大丈夫。もう鬼はいないから』
混乱しかける清を宥める。
てる子は「じゃあ、」と恐る恐る言った。
「炭治郎さんが、鬼を倒してくれた…?」
『あの鬼だけじゃない、他の鬼も我妻さん達が倒したみたいだね。もう一人のお兄さんと一緒に外に出ているよ』
気配を感じ取ってそう伝えると、二人はやっと安堵の表情を浮かべた。
これでもう、鬼に怯えることは無くなった。
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RANA(プロフ) - 鴉蒼さん» ご指摘ありがとうございます。いつも注意しながら書いているのですが、時々見逃してしまいますので、またあったら教えてくださるとうれしいです。 (2020年4月6日 12時) (レス) id: 37ff009e06 (このIDを非表示/違反報告)
鴉蒼 - 富岡さんになってますよ…冨岡さんです… (2020年4月6日 9時) (レス) id: 96316f1cbb (このIDを非表示/違反報告)
サラダ(プロフ) - RANAさん» 教えてくれてありがとうございます!!楽しんで読んでます!更新頑張ってください! (2020年2月22日 20時) (レス) id: a856ca8d9b (このIDを非表示/違反報告)
RANA(プロフ) - サラダさん» "うすい"と読みます!!読みにくくてすみません (2020年2月22日 20時) (レス) id: 1320bd10d0 (このIDを非表示/違反報告)
サラダ(プロフ) - 夢主の名字の読み方がわからないのですが、、、出来れば教えてください!!! (2020年2月22日 20時) (レス) id: a856ca8d9b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:RANA | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/my.php?svd=seb
作成日時:2019年11月19日 0時