【文スト】参謀とは。2

謝罪とは。 ページ18

樋口side


頭を下げ乍ら、怒られるのを覚悟する。
けれど、頭上から聞こえてきたのは


『と、取り敢えず顔上げて？』


怒った声ではなく、戸惑った声だった。

言われた通り顔を上げ、徳永さんを見る。
困った表情を見る限り、どうやら私が謝る理由がわからないらしい。


「...今回、徳永さんを任務の表に出させてしまった挙句、失敗してしまいました。すみませんでした」


再度、頭を下げる。

あぁぁ...怒られる......


『...え、あ、なんだそれか！』

「それ以外に何があるんですか！」


予想外の返答に勢い良く頭を上げる。
徳永さんはホッと胸を撫で下ろした。


『吃驚したー。別にそんな事気にしてないよ、私』

「え、ですが」

『現に龍くんも謝ってこないし。
あっ、そうだ。樋口ちゃん、お金渡すからさ、龍くんに無花果持って行ってくれない？仕事多くてお見舞い行けなさそうだから』


ポカンと口を開けたまま、お金を受け取る。


本当に、いいのだろうか。


不安になって彼女を見れば、困ったように笑っている。


『本当、気にしなくていいよ。あ、無花果の他にも樋口ちゃんも好きなの買っちゃって。目の下に隈できてるし、何か食べた方が良いよ』


...確かに、お腹空いた。

良いタイミングでお腹が鳴る。
それを聞いた徳永さんは笑い出した。


恥ずかしい。


『ふはっ、ほら、行ってきなよ』

「...ありがとうございます」


一礼し、踵を返して部屋を出る。


却説、何を食べようかな。









『むしろ謝るのは、私の方なんだけどなぁ』


参謀の呟きは、誰も知らない。

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