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「⎯⎯⎯お前らを黙らせるにはコレが一番、手っ取り早いわな」
握る剣の先をガンッと床に叩きつけたトントンさまが赤瞳を鋭く光らせてほくそ笑んだ。その赤にあるのはただの苛立ちだけではない。譲れない何かがある、そんな強い意志のようなものを感じて私は彼の隣で背負っていた箒⎯⎯いや、仕込み刀を抜き取った。
「お考えは分かりかねますが、あなたさまの専属メイドとしてご助力いたします」
「話が早くて助かる。けど、あいつらの事舐めたらあかんで。何せ喧嘩祭りで上位を占めるのは毎年俺らやねんから」
「では、彼らに勝ったあかつきには、この私がアラル最強の喧嘩女という訳ですね」
そりゃ、胸が踊るってもんですよ。
「交渉決裂か。そんならこっちも力づくで黙らせる他ないわなぁ!」
待ってましたと言わんばかりに生き生きと声を上げたゾムが宙に放ったナイフを左手に掴み取った瞬間が開戦の合図となった。
全員が一斉に一歩を踏み出し、お互いに譲れない大喧嘩が始まったのだ。
「シャオロン、君のお相手は私がつとめます!」
「女の子に暴力なんて気が引けるけど、ええよ遊んだるわ!」
「私を女の子と呼んでくださるなんて、ときめいちゃうじゃないですか」
厄介なのは明らかに格上と分かっているゾムだが、彼は一直線にトントンさまへと飛び掛った。コネシマは女の私なんて眼中にないのか、同じくトントンさまへ。
ご主人さまをお護りしたいのは山々だが、怒り心頭なご様子の彼は恐らく、そんな必要もないだろう。それならばと私が刀を向けたのはスコップを振りかざしたシャオロンだった。少しでもトントンさまへ向く攻撃の手数を減らす、私に出来る最大限の助力はこれだ。
「ッ、物騒なもん持っとるやんか」
「そんなんでもご主人さまのお仲間ですから、もちろん本当に斬ったりなんてしませんよご安心ください」
「ま、俺は遠慮なくぶっ叩くけどな!」
振り下ろされたスコップを躱せば、本当に遠慮のない勢いで床に弾かれたそれはギィン! と烈しい金属音で吠えた。煌々と輝く黄瞳は一歩引いた私を見て愉快そうに細まる。加減を知らない莫迦で非常識なマフィアめ、本当に、心底ウンザリする。
「知らないでしょうが、実は私、マフィアって奴らが大嫌いなのです」
「ああ、そうなん?」
横に振り切った刃がスコップの柄に止められる。ギリギリ、鍔迫り合う中で嫌悪する彼らを嗤ってやった。
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紫紅兎(プロフ) - 夢主ちゃんのキャラがちょうどいい感じに濃くて素晴らしいですね!tntn様との絡みも大変微笑ましいです…過去に何があったのかも楽しみで色々考察しちゃいます、読むたびにマフィアパロって良いなぁと堪らなくなります、更新楽しみにして待ってます (2021年7月3日 1時) (レス) id: fcae62d2ac (このIDを非表示/違反報告)
リノ(プロフ) - あの………語彙力ないので簡潔にまとめるとですね……………とっっっっっても好きです。 (2021年5月27日 19時) (レス) id: 19366b94fd (このIDを非表示/違反報告)
リュウ - ヤベェおもしれぇですよ(?)更新頑張って下さい!!!!好きです!!! (2021年5月24日 22時) (レス) id: fa1fb43e66 (このIDを非表示/違反報告)
ぴぷ(プロフ) - 夜空さん» 夜空さん、コメントありがとうございます~~! かなりキャラが濃い夢主ちゃんなので尊いとまで言っていただけてとっても嬉しいです! ゆっくりではありますが更新がんばります~~! (2021年5月16日 20時) (レス) id: def2dae9c2 (このIDを非表示/違反報告)
夜空(プロフ) - ゆゆゆゆゆ夢主ちゃんが尊い(*´ω`*) そうゆう性格の女の子の方が私は好きだよ←(何目線??)更新頑張って下さい!!!!! (2021年5月15日 17時) (レス) id: 947663e2d0 (このIDを非表示/違反報告)
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