【d!】それではご主人さま、拳をどうぞ【tn】

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　そんなお喋りはどうでもいいとして。そもそも何故、仲間である彼らがトントンさまに果たし状なんてものを送りつけたのか。その理由を当人のシャオロンに聞いてみれば、何ともくだらない回答が頂けた。


｢謹慎処分食らってん｣
｢……はい？｣
｢一週間後に大事な祭りがあるっちゅうのに1ヶ月も謹慎なんて鬼畜生過ぎるやろ！？ 俺たちは何としても祭りに参加したい。せやからこれは、取引や。エーミールを返して欲しけりゃ謹慎を解け！｣


　トントンさまが怒りに震えながら引き攣り笑う。なるほど、奴らは莫迦なのですね、ご主人さま。

　謹慎を食らったのは恐らく、最近フューラーファミリーが起こしたという他マフィアとの抗争が原因だろう。｢あいつらが喧嘩っ早いせいでウチの印象が最悪や｣とトントンさまが嘆いていたのを思い出した。その後処理に頭を抱えて半狂乱しているのも見た。そりゃもう、鬼のような顔で。


｢謹慎は妥当というか、ファミリーの足を引っ張るような真似をしてその程度の処分なのだから感謝すらしてもよいと私は思いますが｣

　実に正しい事を言った。けれどシャオロンは更に噛みつく。

｢そりゃ分かっとるけど今回は祭りがかかっとねん！ アレに出られへんとそれこそフューラーファミリーは舐められてまう。マフィアは武力で権威を示さな、他に取り柄なんて無いねんから｣
｢武力て、……そもそもその祭りとは何なのですか｣
｢喧嘩祭りや｣
｢けんかまつり｣


　何とも頭の悪そうな催しに今度は私が引き攣り笑った。この町、アラルは我々国の中でも一際盛んな商業で脚光を浴びる大都市だが彼らのようなマフィアがそこかしこに鎮座する治安の悪さも一級で、立ち寄りたいが住みたくない町ナンバーワンという不名誉な称号をもっている。それ故に喧嘩祭りとは恐らく、この町のマフィア共が公式に表立って覇権を競う物騒な催しであるのだろう事は想像に容易い。


｢……毎年お前も喜んで参加しとったやろ。俺らの力を見せつけたれって。なのに今年は誰ひとり参加させへんなんて言うて、どうしてもうたんやトントン｣


　コネシマが疑るような視線でトントンさまを見る。考えがあるなら聞かせろ、コネシマは唯一頭ごなしに反発する訳ではなく、そんな風に何かの裏を察して問うているように聞こえたが、トントンさまは固く口を結んで睨み返すだけだった。

　何となく重苦しい沈黙が流れる。そうして、それを断ち切ったのはトントンさまだった。


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