至高なるサボり方 ページ25
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「ところで何故お外に?」
「あ、」
「マフラーを巻いていらっしゃいますが、もしや外出なさるおつもりですか。おひとりで」
「や、その……」
「外出の際はお声掛けくださいと、そうお伝えしたはずですが」
冷たい北風に攫われる真っ赤なマフラーとロングコート。完全なお出かけ装備であることに気づいてバッと立ち上がりトントンさまに詰め寄ると、彼は「しまった」みたいな顔をして一歩後退る。これは不気味な行動をとっていた甲斐があったというもの。
「私に隠れて外出するつもりがうっかり声を掛けてしまうなんて、ふふ。可愛らしい凡ミスですね」
「……はあ。気分転換に少し街へ降りようと思っとっただけや。あんたが無理矢理眠らせてくれたお陰で幾らか体力もあるしな」
「溜まっているお仕事はよいので?」
「たまにはサボりも必要やろ」
すっかり開き直った様子のトントンさまは微かに笑みを浮かべ、私に背を向けスタスタと屋敷の外へと向かってゆく。それならばお供するのが専属メイドの役目、私も地面に落とした箒を拾ってからその背中を追いかけた。
*
「やっぱり着いてくるんか」と顔を顰められたが構うことなく彼の三歩うしろを歩く。
それにしても、まさかあの仕事馬鹿のトントンさまが「サボりも必要」なんて考えを持ち合わせているとは少々驚いた。サボり方も知らなそうなのに。
ここ、我々国の首都アラルは商業の中心地であり、いくつもの貿易路がアラルの港に通じている。だから世界を見ずともここに来れば近隣諸国の情勢が分かるし、何より他国の上手い飯が食える。と、歩きながらトントンさまが少し誇らしげに話していた。彼はこの街が、いや恐らくは国が大好きらしい。
「……で? トントンさまは一体どこを目指しておいでですか?」
「……」
「先程までは明らかに目的地を目指す足取りでしたが、そこの角を曲がってから少々進む方を迷っているご様子で。もしや私を連れていると何か不都合があるのですか」
「い、いや、そういう訳やないけど……」
「それなら迷うことはないでしょう。ほら、どこまでもお供しますよ」
明確な目的地があるのに何故か渋るトントンさまはゆっくりと前へと進めていた足を止めさせる。そうしてやや何かと葛藤してからくるり、方向を変えて歩きだした。
さて、どこへ連れていかれるのやら。彼に限って怪しいような場所ではないと思うが。
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紫紅兎(プロフ) - 夢主ちゃんのキャラがちょうどいい感じに濃くて素晴らしいですね!tntn様との絡みも大変微笑ましいです…過去に何があったのかも楽しみで色々考察しちゃいます、読むたびにマフィアパロって良いなぁと堪らなくなります、更新楽しみにして待ってます (2021年7月3日 1時) (レス) id: fcae62d2ac (このIDを非表示/違反報告)
リノ(プロフ) - あの………語彙力ないので簡潔にまとめるとですね……………とっっっっっても好きです。 (2021年5月27日 19時) (レス) id: 19366b94fd (このIDを非表示/違反報告)
リュウ - ヤベェおもしれぇですよ(?)更新頑張って下さい!!!!好きです!!! (2021年5月24日 22時) (レス) id: fa1fb43e66 (このIDを非表示/違反報告)
ぴぷ(プロフ) - 夜空さん» 夜空さん、コメントありがとうございます~~! かなりキャラが濃い夢主ちゃんなので尊いとまで言っていただけてとっても嬉しいです! ゆっくりではありますが更新がんばります~~! (2021年5月16日 20時) (レス) id: def2dae9c2 (このIDを非表示/違反報告)
夜空(プロフ) - ゆゆゆゆゆ夢主ちゃんが尊い(*´ω`*) そうゆう性格の女の子の方が私は好きだよ←(何目線??)更新頑張って下さい!!!!! (2021年5月15日 17時) (レス) id: 947663e2d0 (このIDを非表示/違反報告)
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