夢の中に閉じ込めて ページ44
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｢……おい、トントン｣
｢とんとん、わたしは本当に、｣
｢阿呆やなあ、お前。勘違いしとるって。俺やってお前のこと好きやけどそれは幼馴染としてやで｣
｢っ、｣
ああ、そうだ。これが初めての拒絶だった。
｢……分からんな。俺に取られるのが心底嫌だという顔をしながらどうしてそんなことが言える？｣
｢そんなこと思ってへんけど？ 寧ろふたりお似合いやし、Aやってお前のこと好きやと思うで｣
｢……｣
｢ち、がうよ、わたし、トントンがすき。ねえ、信じてよ｣
｢……ごめんな。俺は、お前を幼馴染以上には思えへん。お前もそうやろ。そうに、決まっとる。せやからあいつに応えてやってくれ｣
｢この関係がお前を勘違いさせてまうんなら、もう、幼馴染はここで終わりにしようや｣
何を思って彼がそんなことを言うのかさっぱり分からなかった。けれど今になって私を突き放そうとするトントンが泣きだしそうな顔で笑っていたということに気づいた。
そろり、大粒の涙を落とす私の頬をいつもより優しく指先で撫でてからトントンはふたりを置いて教室を出ていく。その背中は逃げ出したようにも見えた。
｢……あー、A。俺が余計なことを言ったせいだな。すまない｣
｢ちがう、グルッペンがわるいわけじゃない。ばかとんとんが、わるいの…っ｣
｢……｣
覚えたてのメイクが崩れるのも気にせずに泣きじゃくって、振ったばかりの男に背を叩かれるその姿はとても間抜けだった。
｢お前の言葉が本心だと、俺は知ってる。分かっている。勘違いしているのはあいつの方だ｣
｢……そう、だよ｣
｢頭が冷えた時にきっと後悔するぞ。お前に酷いことを言って、嫌われたんじゃないかってな｣
｢そうだ、後悔しろばかとんとん、｣
幼馴染として、だけじゃない。本気で彼に恋をしていた。大人の私には分からなかった境界線にこの頃の私はちゃんと気づいていたんだ。
｢俺の気持ちも、あいつの言葉も、全部忘れてしまえ｣
｢……わす、れる？｣
｢ああ。いつも通り、ただの幼馴染でいてやれ。それだけであいつはすぐに今日の自分を殴りたくなるだろう｣
俯く私の顔を覗き込み、悪い顔して笑うグルッペン。完全に忘れていたけれど、この時私は彼を振ってしまったのに随分と長い付き合いになった。大人になって張り合う私たちを彼はどんな気持ちでみていたのだろう。私の背中を押した時、やっぱり、彼は寂しがっていたんだろうか。
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違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
るな？ - 序盤のほうからめっちゃ泣けてました！ドキドキもあるけど感動って作者様神ですか！？ (2022年3月5日 2時) (
レス) @page50 id: 12ba396496 (このIDを非表示/違反報告)
猫大好き - めっちゃ遅れました。完結、おめでとうございます!!私も、成功するかわかんないけど好きな人に、好きって言う勇気が付きました。ありがとうございます!! (2021年2月3日 19時) (レス) id: 932515d6d7 (このIDを非表示/違反報告)
ぴぷ(プロフ) - もちたさん» もちたさん、こちらこそ最後までお付き合いいただきましてありがとうございます〜！みんなドキドキしてくれ！の精神で書きなぐっていたのでそう言ってもらえてはちゃめちゃに嬉しいです…！本当にありがとうございました！ (2021年1月28日 22時) (レス) id: def2dae9c2 (このIDを非表示/違反報告)
ぴぷ(プロフ) - ネこさん» ネこさん、コメントありがとうございます〜！イッキ見！楽しんでいただけたようでとっても嬉しいです…！最後までありがとうございました！ (2021年1月28日 22時) (レス) id: def2dae9c2 (このIDを非表示/違反報告)
もちた - ちょっと遅れてしまいましたが、完結、おめでとうございます...!こんなにドキドキできた作品は初めてです...本当に...ありがとうございます(た)...! (2021年1月26日 20時) (レス) id: d31df64977 (このIDを非表示/違反報告)
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