やけた空と心 ページ38
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｢……結局、あの子は誰なの？｣
｢だから会長の娘さんやって｣
｢なんでそんな子がトントンなんかと一緒にいるのよ｣
｢たまに社会科見学やって会長があの子を会社に連れてくんねん。そんで、普段乗られへんから帰りは電車がええって我儘言うからここまで案内を頼まれとっただけやけど｣
｢……ふ、ふうん｣
｢因みにまだ高校生やで｣
｢…………へ、え｣
な、るほど？ まあたしかにタッパはあるからボディガードとして悪くない選択かもしれない。何たって会長の娘さんだし、何かあったら一大事だ。……でも、本当にそれだけ？ あんなに楽しそうに話して、
そこまで考えてハッとした。｢Aさんのことばっかり｣なんて彼女の言葉を思い出したのだ。
｢……なあ、A｣
｢なに、｣
｢……あー、その。…それは、妬いとんの？｣
｢……は、？｣
未だ腕を回していたトントンの身体から弾かれたように飛び退いた。妬い、……妬いてる？ ヤキモチ？
｢……お、幼馴染が！ 私より可愛い子連れてたら気になるでしょ！ それで、｣
｢それで？｣
｢……や、妬いてなんか、ない｣
尻すぼみしながらもそう言ってやれば、トントンからは小さく笑い声が返ってきた。｢なによ｣と、じっとり睨むように彼を見上げて、あれ、と目を瞬かせる。
知らないようで、知ってる顔。あの子の隣で浮かべていたあの、とびっきり優しい笑顔がそこにあったのだ。
｢……変なこと聞いてごめんな。ほら、どうせ今日もうち来るんやろ。夕飯買って帰ろ｣
｢う、うん｣
ぐしゃり、と彼の大きな手が頭を撫でた。それは優しくなんかなくって、雑な撫で方だけれど、その瞬間私の心臓はどうしてかきゅうっと縮こまって上手に息が出来なかった。鼓動が早くって、胸が痛い。君の笑顔がやけに眩しく見えて、他の誰も見せたくない、なんて思って。もっと欲しくて、堪らなくて。
なに、これ。こんなのまるで⎯⎯⎯
｢……手、いまなら繋いでやってもええよ｣
｢……っつ、繋ぐかばあか！｣
｢い゛っ！？｣
私が、君に恋してる、みたいじゃんか。
夕焼けのせいだろう。赤く染まっている顔を緩ませたトントンから差し出された手をぎゅむっと抓って、私は芽生えだした気持ちから逃げるように走り出した。
｢……知っとるか、A。いや、忘れてもうたよな｣
｢俺もお前も、はなっから負けとるんやで｣
先をゆく背中にそうっとかけられた声に、私は気づかない。
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違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
るな？ - 序盤のほうからめっちゃ泣けてました！ドキドキもあるけど感動って作者様神ですか！？ (2022年3月5日 2時) (
レス) @page50 id: 12ba396496 (このIDを非表示/違反報告)
猫大好き - めっちゃ遅れました。完結、おめでとうございます!!私も、成功するかわかんないけど好きな人に、好きって言う勇気が付きました。ありがとうございます!! (2021年2月3日 19時) (レス) id: 932515d6d7 (このIDを非表示/違反報告)
ぴぷ(プロフ) - もちたさん» もちたさん、こちらこそ最後までお付き合いいただきましてありがとうございます〜！みんなドキドキしてくれ！の精神で書きなぐっていたのでそう言ってもらえてはちゃめちゃに嬉しいです…！本当にありがとうございました！ (2021年1月28日 22時) (レス) id: def2dae9c2 (このIDを非表示/違反報告)
ぴぷ(プロフ) - ネこさん» ネこさん、コメントありがとうございます〜！イッキ見！楽しんでいただけたようでとっても嬉しいです…！最後までありがとうございました！ (2021年1月28日 22時) (レス) id: def2dae9c2 (このIDを非表示/違反報告)
もちた - ちょっと遅れてしまいましたが、完結、おめでとうございます...!こんなにドキドキできた作品は初めてです...本当に...ありがとうございます(た)...! (2021年1月26日 20時) (レス) id: d31df64977 (このIDを非表示/違反報告)
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