星に触れる指先 ページ7
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｢随分と遅かったやんか。手間取ったん？｣
｢あー、まあ、そんなとこ｣
城に帰った頃にはすっかり陽が昇り、目が眩むほどの朝日と共に書記長室を訪れた。明るいとはいえまだ多くの人間が夢の中にいるであろう、早朝。そんな中でも常に色濃い隈を刻んでいるトントンは今日も変わらず帰投した俺を死んだ顔で出迎える。
｢なあ、トントン｣
｢任務報告書は？｣
｢そんなん後やんか。疲れとって筆握る力もないわ。それより聞きたいことがあんねんけど｣
｢口は元気に回っとるみたいやけどな｣
じとりと睨まれるが構わずソファーへと身を投げる。突き刺さる視線を感じながらも、ごろり、寝そべればここ数日分の眠気が一気に脳を襲いかかった。段々と口先が重くなる。しかし、これだけは聞いておこう、と何とか言葉を天井へと吐き出した。
｢まほう、魔法があったら、それはこの国を守るための力になるんかな｣
｢はあ？｣
｢たとえば、一瞬で怪我を治せたり。死んだ人間を、蘇らせたり。そんな魔法があったらこの国は、強くなれるか？あんたらは、よろこぶか？｣
｢……寝言は寝て言うもんやで、ゾム｣
｢阿呆なこと聞いとるって自覚はあんねんで｣
魔法。あまりにも、未知に溢れた力だった。可能性ばかりのそれはどこか恐ろしく、同時に夢のような希望も乗せている。仲間は未知を恐れるだろうか。それとも、俺のように⎯⎯⎯最高の武器を見つけた、とよろこぶだろうか。
カタン。トントンが休むことなく紙面に滑らせていた万年筆を机上に転がす。呆れているのか、怒っているのか、あいつは深いため息を吐き捨て書類の束へ遠慮なしに顔を伏せさせた。
｢……そんなもんがあったらええなぁ｣
｢ほんまに？｣
｢まあ。腕が十本あっても足りひんくらい多忙やねんから、魔法なんてあったらそりゃ手放しで縋るやろ｣
｢魔法で腕二十本生やすんか。確かに仕事捗るな｣
｢いや絵面きっしょ。そうやなくて、俺の代わりに働いてくれるやつを魔法で作る｣
｢ああ、それええな。……おん、ええな、魔法｣
トントンは、魔法が欲しいらしい。仲間がよろこぶ。仲間のためになる。そんな、魔法。それはきっと俺が思うような武器にもなるだろう。
｢⎯⎯⎯決めた。俺、魔法使い捕まえるわ｣
｢……は、？｣
星を掴まんとする頼りない彼女の指先が宙をきったあの瞬間を思い出す。それと⎯⎯⎯恐らく彼女を繋ぎとめているのであろう鎖を。
あの星を、俺が奪ったる。
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ぴぷ(プロフ) - 妹。さん» 妹さん、コメントありがとうございます~！ゆっくり更新にはなりますが、今回は明るめな(開幕不穏ではありましたが)おはなしにしていこうと思いますのでぜひよろしくお願いします！zmリクエストありがとうございました！ (2020年9月9日 15時) (
レス) id: def2dae9c2 (このIDを非表示/違反報告)
妹。(プロフ) - 通知に歓喜で泣きそうです。ありがとうございます。 (2020年9月7日 20時) (レス) id: 15a5300c38 (このIDを非表示/違反報告)
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