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嫌な音がした。
柔い砂浜も、あれほどの高さがあればコンクリートと何ら変わりない硬さだろう。せっかく心に穏やかさを取り戻していたところだったと言うのに、なんて傍迷惑な女だろうか。夢見が悪くなりそうだ。
止まっていた歩みを進める。そうして上手く死にきれたんやろか、と好奇心から女が落下した灯台へのそのそと近寄った。
｢⎯⎯⎯うんざりするほど、きれーな空｣
そんな声を聞いて、また足が止まる。女の声だ。
つい今しがた灯台から落下したはずのあの女が砂浜の上に大の字で転がっていた。星空を仰ぎ、そうして天へと伸ばした右手できゅっと宙を掴む。
生きているらしい。
｢広い、なぁ。……遠いなぁ｣
悠長に大きな独り言を零す余裕まで。あの高さから落ちて平気でいられるはずがない。だというのに彼方の星を見つめる女の横顔には笑みがあった。
おかしなことに女の身体は潰れても、ひん曲がってもいない。まるで最初からただ転がっていたように五体満足でそこにいた。幾ら下が砂浜とはいえ、果たしてそんなことが有り得るのだろうか。
｢死にたかったん？｣
思わず声をかけてしまった。転がる女の傍で膝を折りたたみ、そうして上から顔を覗き込む。ぱちりと瞬いた双眼と視線が絡んだ。ぱちり、ぱちり、更に数度瞬いたそれは深い青に光芒を呑み込み、どう見ても生気に満ちている。
｢……ふふ、急に現れるんだもん。びっくりしちゃった｣
｢そりゃこっちの台詞やねんけど｣
月よりも、太陽が似合う。そんな明るい笑顔を見せた彼女の着ていた真白のワンピースは、よく見れば所々赤黒く染まっていた。やはり落下したのは見間違えではないようだ。しかし、どうだろう。潮風に靡くワンピースから覗く手足には一切の傷が見当たらない。
｢いやぁ、本当に驚いちゃった！……でも、そろそろ来てくれるんじゃないかなって思ってたよ｣
｢……俺が？｣
星を掴もうとしていた彼女の手が、覗き込む俺へと差し出される。そうして彼女はやはり笑った。にっこり、心底、嬉しそうに。
｢⎯⎯⎯そう。私の、王子さまが｣
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ぴぷ(プロフ) - 妹。さん» 妹さん、コメントありがとうございます~！ゆっくり更新にはなりますが、今回は明るめな(開幕不穏ではありましたが)おはなしにしていこうと思いますのでぜひよろしくお願いします！zmリクエストありがとうございました！ (2020年9月9日 15時) (
レス) id: def2dae9c2 (このIDを非表示/違反報告)
妹。(プロフ) - 通知に歓喜で泣きそうです。ありがとうございます。 (2020年9月7日 20時) (レス) id: 15a5300c38 (このIDを非表示/違反報告)
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