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鉛のように重たい瞼を押し上げた。そうして、目の前に広がった赤色の景色にぐっと胸を押さえつけ、溢れ出しそうになる涙を堪えながら崩れ落ちた門に視線を向ける。
ああ、今なら思い出せる。俺とAは此処で、一緒に戦っていた。押し寄せる敵の波に抗いながら、必死に剣を振るって。
Aは怯えていた。鳴り止まない銃声、鼻を刺すような鉄と脂の臭い、目を瞑りたくなるような惨状に。それでも自分は国を護る為に強さを求めた人間だと、今にも崩れ落ちそうな膝を憎らしそうに睨みながら、精一杯に強がって戦っていた。
『情けないよね、笑っちゃうよね。私って、こんなに弱い人間だったんだ』
そう言って笑うAを思い出した。確かにその姿はとても小さく見えたけれど、俺はそんな君を護りたいと願っていた。
状況は最悪で、城下へ続くこの門も押し切られようとしていた。
そんな時に、何処からか城に敵軍が侵入したと伝達が届いて。他の仲間に連絡を試みたが繋がる気配は無く、現状は全く把握出来ないが作戦通りの持ち場に着いていたとすれば、あの時城に一番近いのは俺たちだった。
『トントン、私が絶対にここを護るから。だから、行って』
『大丈夫。私、もうひとりでも戦えるよ』
あの時、Aは笑って俺の背中を押した。
大丈夫な訳が無い。剣を握る彼女の手は震えていた。怖いはずなのに、それでも笑って強がってみせる。そんな彼女を置いてはいけない。でも、城にはグルッペンがいる。幹部も数名いるが戦闘向きでないのは確かで。
「……絶対に、戻るって。俺、そう約束したんやったな、A」
結局、俺は苦渋の思いで一部隊を引き連れ城へと向かった。ボロボロになってしまった彼女の剣の代わりに、俺の剣を残して。
必ず戻ると約束した。"待ってる"と言って、泣きだきそうな表情で笑った彼女を、抱きしめることもせずに離れてしまった。
「一生の幸せは、誓えない。俺がいつ君を残して先に死ぬかも分からんような、そんな人間だから。それでも、俺なりに、…っ、精一杯君を幸せに出来るように、努力する、から…そう、言うたよな、俺」
それなのに、
「っ、約束も、守れへんような男で、ごめんな。俺は、君を幸せになんて、してやれなかった。ずっと待ってたよな。今でも、待っててくれとるのかな、ごめん。ごめ、…っ、」
俺の後悔と、罪を思い出した。
約束、破ってごめんな。
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夜狐 - んもう好き……() (2021年7月3日 14時) (
レス) id: 587d00a7a2 (このIDを非表示/違反報告)
ぴぷ(プロフ) - すみれいんさん» すみれいんさん、まさかの周回ありがとうございます…！完結から日の経った今でもこの作品を読んでいただけていることが心の底から嬉しいです…！；；；； (2020年12月27日 1時) (レス) id: def2dae9c2 (このIDを非表示/違反報告)
すみれいん(プロフ) - 再び読みにきてもう、やっぱり好きです (2020年12月20日 20時) (レス) id: a715f4eb82 (このIDを非表示/違反報告)
ぴぷ(プロフ) - 宙さん» 宙さん、コメントありがとうございます〜！タイトルの意まで気づいていただけでとっても嬉しいです；；；；最後までありがとうございました！ (2020年9月2日 21時) (レス) id: def2dae9c2 (このIDを非表示/違反報告)
宙(プロフ) - 神作。なんて素敵な終わり方なんだあ！題名の意味3か4シリーズぐらいでもしかしてって思ったけど感動したーー！なんて素敵な作品なんだ！！ (2020年8月27日 19時) (レス) id: a1083db659 (このIDを非表示/違反報告)
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