確かにあった幸せ ページ16
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瞼を開けるのが酷く億劫で、身体は微睡みに呑まれ宙を漂い、とても温かな優しい空気に包まれているような。そんな、不思議な感覚の中で俺は"声"を聞いていた。
『書記長、いい加減お休みになられたらどうですか』
『執務は退屈です。この狭い部屋に閉じ込められて、楽しい訳ないじゃないですか』
それはAの声で、俺はその声を聞く度にひとつ、ふたつと彼女の姿を思い描かせていた。
そうだ、初めて出会った時、彼女は酷く冷たい表情ばかり浮かべていた。投げ掛けられる言葉も冷ややかで、嫌われてしまったのかと少し残念に思っていて。
『…トントンさん、そろそろ怒りますよ』
『っい、一時とはいえ、直属の上司ですから、私が貴方を気にかけるのは何も不自然じゃないでしょう』
Aは任務の折に大怪我を負ってしまって、完治するまでの間俺の補佐を務めていた。ゾムの所の部隊員だったと思う。
一緒に仕事をしていくうちにAはゆっくりと色んな顔を見せてくれるようになっていって、そんな彼女に気付けば惹かれている自分がいた。
『っふふ。お優しいんですね、トントンさん』
『…わ、私が笑ったら変ですか』
初めてAが俺に笑顔を見せてくれた時。どうしようもなく彼女が好きなんだと自覚した。弱い自分が嫌いだと、そう言って自分を責め続ける彼女の力になってやりたいと、護ってやりたいと、強く感じて。
『わ、私、そんな風に言われたの、初めてで…っ』
『私なんかで、いいの、？』
笑ってる時、泣いてる時、怒ってる時
どうしようもなく悲しくて、寂しくなった時
誰かに伝えたい程、嬉しく思った時
いつだって、彼女が隣にいたら
いつだって、俺が隣にいれたら
それ以上の幸せはないと、思ってた。
『っ大好き、大好きだよ、トントン』
俺も、君が大好きやで。
心の底から、愛してた。
「…っ、ごめん、ごめんなぁ、A」
あんなにも大切に想う君を、忘れてた。
逃げちゃいけないのに、離しちゃいけないのに。
泣き虫で、寂しがりで、それでいて強がりで、
そんな君と一緒に生きると、誓ったはずなのに。
「俺な、信じとるよ」
また、隣で俺の大好きな笑顔を見せてくれるって。
だからな、もう逃げへんよ。何があったとしても、全部受け入れて。ずっと、ずっと、この気持ちを忘れないでいるから。
もう、二度と忘れたりなんてしない。
俺は、君と一緒に前を向くから。
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夜狐 - んもう好き……() (2021年7月3日 14時) (
レス) id: 587d00a7a2 (このIDを非表示/違反報告)
ぴぷ(プロフ) - すみれいんさん» すみれいんさん、まさかの周回ありがとうございます…！完結から日の経った今でもこの作品を読んでいただけていることが心の底から嬉しいです…！；；；； (2020年12月27日 1時) (レス) id: def2dae9c2 (このIDを非表示/違反報告)
すみれいん(プロフ) - 再び読みにきてもう、やっぱり好きです (2020年12月20日 20時) (レス) id: a715f4eb82 (このIDを非表示/違反報告)
ぴぷ(プロフ) - 宙さん» 宙さん、コメントありがとうございます〜！タイトルの意まで気づいていただけでとっても嬉しいです；；；；最後までありがとうございました！ (2020年9月2日 21時) (レス) id: def2dae9c2 (このIDを非表示/違反報告)
宙(プロフ) - 神作。なんて素敵な終わり方なんだあ！題名の意味3か4シリーズぐらいでもしかしてって思ったけど感動したーー！なんて素敵な作品なんだ！！ (2020年8月27日 19時) (レス) id: a1083db659 (このIDを非表示/違反報告)
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