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遠くから、誰かの話し声が聞こえるような気がして目を開けた。また、夢だろうか。そう思ったのだけれど、真っ暗な部屋と冷たく柔らかい布団の感触に現実なのだと気がついた。
あれ、私、いつの間に帰ってきたんだろう。
「＿＿＿…ッい、……と、ん…！」
「……ん、？」
また聞こえてきた声に首を傾げる。聞き間違いでなければ、その声はグルッペンのものに聞こえた。いや、まさか、ね。
空耳だと考えつつも、リビングへと足を向かわせる。きっとトンくんがテレビでも見ているのだろう、そう思って。
「っねえ、グルッペン！トンくんが、…っ」
「…落ち着け、A。眠っているだけのようだ」
「え、？」
リビングには何故かグルッペンがいて、そして私の目の前でトンくんがばたん、と力なく床に倒れ込んだ。咄嗟にトンくんに駆け寄り肩を揺するが反応は無く、瞼は重く閉ざされている。
冷静に状況を見たグルッペンが私を押し退け、そしてトンくんをソファーまで引きずっていった。彼をよく見てみれば、確かに小さな寝息が立てられている。眠っているだけだと一先ず安堵したが、…どうしてグルッペンが此処に？
「…っくそ、相変わらず重いな、こいつ」
「……ね、ねえ、グルッペン、」
「ああ、話ならこいつから全て聞いた」
その言葉にぴんと背筋が伸びてしまう。
「何故、相談しなかった？」
「……ごめんなさい」
「…まあ、いいが」
怒っているのかどうか分からないが、何となく顔を上げづらい。相談しなかったのはトンくんに止められていたからだけれど、やっぱり言うべきだっただろうか。
「急に眠った理由は分からんが、その内起きるだろ。俺は帰るぞ」
「…もしかして、私の事家まで運んでくれた？」
「この仮は倍にして返してもらうからな」
「っご、ごめん、ありがとグルッペン」
「…ふ、冗談だ。それより、トントンが起きたら伝えておいてくれ。"俺の背中も押してやってくれ"と」
「…？わ、分かった」
言葉の意味はよく分からないが、グルッペンはそう言って笑い、そのまま帰ってしまった。
ソファーに背を預け、座ったまま静かに眠るトンくんの隣に膝を畳んで座り込む。彼の腕に寄り掛かり、力なく垂れている彼の手をきゅっと握れば、その指先は驚く程に冷たくて私の不安を煽っていった。
「…起きたら、また、おはようって言ってね」
このまま、消えたりしないでね。
私、トンくんに言わなきゃいけないことがあるの。
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夜狐 - んもう好き……() (2021年7月3日 14時) (
レス) id: 587d00a7a2 (このIDを非表示/違反報告)
ぴぷ(プロフ) - すみれいんさん» すみれいんさん、まさかの周回ありがとうございます…！完結から日の経った今でもこの作品を読んでいただけていることが心の底から嬉しいです…！；；；； (2020年12月27日 1時) (レス) id: def2dae9c2 (このIDを非表示/違反報告)
すみれいん(プロフ) - 再び読みにきてもう、やっぱり好きです (2020年12月20日 20時) (レス) id: a715f4eb82 (このIDを非表示/違反報告)
ぴぷ(プロフ) - 宙さん» 宙さん、コメントありがとうございます〜！タイトルの意まで気づいていただけでとっても嬉しいです；；；；最後までありがとうございました！ (2020年9月2日 21時) (レス) id: def2dae9c2 (このIDを非表示/違反報告)
宙(プロフ) - 神作。なんて素敵な終わり方なんだあ！題名の意味3か4シリーズぐらいでもしかしてって思ったけど感動したーー！なんて素敵な作品なんだ！！ (2020年8月27日 19時) (レス) id: a1083db659 (このIDを非表示/違反報告)
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