2 ページ29
.
漸く辿り着いたトントンの住んでいる部屋の前で、一旦大きく深呼吸をした。忙しなく上下する肩をゆっくりと落ち着かせ、それからインターホンを押す。
暫く待っていれば、ガチャリと鍵の回る音がしてびくりと心臓を跳ね上げさせた。
良く考えたら、私はこれから彼に告白をしようとしている訳で。この間気持ちは伝えたけれど返事は自分で先送りにしたし、幾ら前世で関係があったとはいえ、幼馴染として過ごした時間も長いのだから流石に緊張してまう。
しかし、ゆっくりと開けられた玄関扉の先に彼の姿が見えた途端。あれ程愛した人と再び巡り会えたという奇跡を漸く実感した私は緊張なんかよりも嬉しさが上回って、私を見て目を丸くさせた彼に向かって勢い良く飛びついてしまった。
「ットントン！」
「っちょ、A、！？危な、っ、」
思ったよりも勢いのあった私のタックルを正面から受け止めたトントンが数歩後ろによろけ、私を支えたまま廊下に尻もちをつく。
片腕を床について何とか倒れ込むのを阻止したトントンが「え、え？」と困惑した声を漏らす。しかし彼の足の上で受け止められた私は気に留める事なく、そのままぎゅうっと彼の首裏に腕を回して強く抱きしめた。
「っ、トントン、私、思い出したよ…！」
「え、」
「それでも、トントンへの気持ちは変わらない。っ大好き、大好きだよ、とんと、ッんむ、」
伝えたい言葉は沢山あるのに、それを飲み込むようにトントンが私の唇を塞いだ。
両頬に添えられた彼の大きな手は温かくて、重ね合わせるだけのキスはとっても懐かしい。幸せだったあの頃の感覚がふつふつと蘇り、胸が苦しいくらいに締め付けられる。
幼馴染として、自然に空いてしまっていた二人の隙間が、この瞬間にピッタリと埋められたように感じた。
唇を離したトントンが一瞬だけ涙に濡れた瞳を見せて、それを隠してしまうように私をぎゅっと抱きしめる。
「…Aを護れんかった自分が、幸せにするって言っておきながら約束も守れんかった自分が、Aの隣にいてもええんかってずっと考えとった。いつかAが思い出した時、突き放されるんやないかって、怖かった」
「約束を破ったのは、私の方だよ。それにね、トントンは充分私を幸せにしてくれてるよ。あの頃も、今もね」
「…っ、俺を、責めないんか」
「責めないよ。それよりも、生まれ変わっても隣に居てくれたことがとっても嬉しいの」
'
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 879人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
夜狐 - んもう好き……() (2021年7月3日 14時) (
レス) id: 587d00a7a2 (このIDを非表示/違反報告)
ぴぷ(プロフ) - すみれいんさん» すみれいんさん、まさかの周回ありがとうございます…！完結から日の経った今でもこの作品を読んでいただけていることが心の底から嬉しいです…！；；；； (2020年12月27日 1時) (レス) id: def2dae9c2 (このIDを非表示/違反報告)
すみれいん(プロフ) - 再び読みにきてもう、やっぱり好きです (2020年12月20日 20時) (レス) id: a715f4eb82 (このIDを非表示/違反報告)
ぴぷ(プロフ) - 宙さん» 宙さん、コメントありがとうございます〜！タイトルの意まで気づいていただけでとっても嬉しいです；；；；最後までありがとうございました！ (2020年9月2日 21時) (レス) id: def2dae9c2 (このIDを非表示/違反報告)
宙(プロフ) - 神作。なんて素敵な終わり方なんだあ！題名の意味3か4シリーズぐらいでもしかしてって思ったけど感動したーー！なんて素敵な作品なんだ！！ (2020年8月27日 19時) (レス) id: a1083db659 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
