何処かの世界、いつかの日 ページ1
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「＿＿＿君は、生きとるのがそんなに楽しくないんか？」
何かに反射する眩しい光と、そんな聞き覚えのある声にゆっくりと瞼を押し上げさせた。
そして目前に広がった光景に、思わずはっと息を飲む。
沢山の書類に溢れた一室。二つの机に向かう、男女の姿。
深緑色の軍服を身にまとった彼は何処からどう見てもトンくんだ。そして、もう一人の真っ黒の軍服の彼女は＿＿私と、同じ顔に見える。今の私よりも幾らか若いだろうか。そして、そんな彼女はどうしてか車椅子に座っていた。
「……業務中です。私語は、」
「昨日、無茶したらしいやん。チーノが泣いとったで？」
「……」
「"死んでも構わない"なんて、無責任な言葉やと思わんか」
トンくんの口から淡々と吐かれる言葉は、彼女を責めているように聞こえた。
お互いに手元の書類に視線を落としたまま顔を上げようとはしない。少し険悪な空気を感じ取り、私は部屋の隅に立ったまま息を殺した。
「俺、君の笑った顔見た事ないねん。そんな暗い顔ばっかしとるから余計に楽しくないんやって」
「無駄口が過ぎますよ、書記長」
「最近大分口悪くなったなぁ、君。ちょっとは心開いてくれとる証拠か」
「……ほんと、煩い人ですね」
「しゃあないやん、グルッペンから頼まれとるんやし。君が変な事考えとったら俺は君に説教せなあかんのやから」
「考えてません。どうぞ、お仕事なさって下さい」
「……ほんま、冷たいなぁ」
＿＿＿＿この光景は、平行世界でのものだろうか。軍服、見慣れない文字、立て掛けられた剣。そうだ、間違いない。
それにしても、平行世界の私は随分と冷たい人間のようだ。紙面をなぞる瞳にはあまり覇気がなく、トンくんに対してこの口のききよう。
車椅子に乗っている所を見るに、怪我でもしているんだろうか。目の前で口を開いているのは自分と同じ姿だというのに、あまりにも自分と似つかない彼女が何だか不思議に感じる。
「無理して私に構う必要ありませんよ。トントンさんには良くしてもらっていると、ちゃんと彼に報告しますから」
「それは俺の勝手やろ」
「女はお嫌いでしょう」
「……案外、俺の事知っててくれとるんやな？」
「………それしか知りませんよ」
状況はよく分からないが、彼女はトンくんの事が嫌いなんだろうか。トンくんも、と思ったが、彼はいつの間にやら視線を彼女へと向けていて、そしてその瞳を何処か優しげに細めさせくすりと笑みを零していた。
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夜狐 - んもう好き……() (2021年7月3日 14時) (
レス) id: 587d00a7a2 (このIDを非表示/違反報告)
ぴぷ(プロフ) - すみれいんさん» すみれいんさん、まさかの周回ありがとうございます…！完結から日の経った今でもこの作品を読んでいただけていることが心の底から嬉しいです…！；；；； (2020年12月27日 1時) (レス) id: def2dae9c2 (このIDを非表示/違反報告)
すみれいん(プロフ) - 再び読みにきてもう、やっぱり好きです (2020年12月20日 20時) (レス) id: a715f4eb82 (このIDを非表示/違反報告)
ぴぷ(プロフ) - 宙さん» 宙さん、コメントありがとうございます〜！タイトルの意まで気づいていただけでとっても嬉しいです；；；；最後までありがとうございました！ (2020年9月2日 21時) (レス) id: def2dae9c2 (このIDを非表示/違反報告)
宙(プロフ) - 神作。なんて素敵な終わり方なんだあ！題名の意味3か4シリーズぐらいでもしかしてって思ったけど感動したーー！なんて素敵な作品なんだ！！ (2020年8月27日 19時) (レス) id: a1083db659 (このIDを非表示/違反報告)
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