私の提案 ページ4
.
「でな、そん時に大先生が、」
「……」
「……話、聞いとる？」
「っえ、あ、聞いてるよ？」
「大先生をビンタしたやつの名前は？」
「………ユキちゃん？」
「一文字もかすってへんわ」
休憩コーナーでトントンとの昼食の時間。今日一日どこか仕事が身に入らず、ずっとぼんやりとしてしまっていた。折角トントンと一緒にいるというのに、彼との会話も上の空で傍聴一方。普段ならペラペラと回る口が上手くいかず、それを不審に思ったのかトントンが鋭く突っ込んできた。
「お前がそんなんやと調子狂うんやけど……」
「ご、ごめんね。えっと、大先生が何だっけ？」
「それはもうええわ。それより、どうしたん？何か悩み事でもあるんなら話聞くけど」
こういう時、真っ先に気付いて不安や悩みを少しでも解消してくれようとするのがトントンで、そんな優しさにはもう何十年と助けられてきた。しかし、私が今思い悩んでいるのはトンくんのことであり、トントンには話せないこと。申し訳ないが、気持ちだけ有り難く受け取っておくことにしよう。
「ふふ、ありがと。でも大丈夫。そんな大したことじゃないから」
「……Aがそういう顔しとる時って、殆ど大丈夫じゃないねんけど」
「え、い、いや、本当に大丈夫だよ？」
「……まぁ、無理に話せとは言わへんけどさ。もし耐えきれんくなったら、いつもみたいに泣きついてきてもええからな」
「……トントンの優しさにもう泣きそう」
「今はやめとき、メイク崩れるで」
流石の幼馴染。トントンに私の嘘が通用しないのは分かりきっていた事だけど、無理に聞き出そうとしないところが彼らしい。
トントンの言う通り、普段なら速攻で泣きついているけれど、きっと私なんかよりもトンくんの方が悩んでいるんだろうから今は私が弱音を吐いている場合ではない。
「トントンの貴重なデレを見たら、ちょっと元気出てきた」
「元気ないお前見とったらこっちまで気が滅入るからな。しゃあなしや、しゃあなし」
「なるほど、元気ない振りすればいつでも見れるってことか」
「阿呆、こっちはお前の嘘なんて手を取るように分かんねんぞ」
「駄目かぁ……」
名案だと思ったのだけど、残念。まぁ、いつものツンツンしてる彼も可愛いからいいんだけど。
トントンのお陰で午後はもう少し仕事がはかどりそうだ。今日も残業回避のために、午前の分を何とか挽回しなくては。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 666人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぴぷ(プロフ) - みおさん» みおさん、初めまして！一番！？嬉しすぎて泣きましたありがとうございます(；；)更新頑張ります〜〜！♪ (2019年12月26日 23時) (
レス) id: def2dae9c2 (このIDを非表示/違反報告)
みお - 初めまして、いつも更新楽しみにしております！tんさんのお話で一番好きです.......この先の展開がとても気になってドキドキワクワクが止まりません！これからも更新頑張って下さい(○´ｰ`○) (2019年12月26日 11時) (レス) id: 0d2c4c6642 (このIDを非表示/違反報告)
鯉口(プロフ) - ぴぷさん» ほんと！？楽しみにしてるね！！(((o(*ﾟ▽ﾟ*)o))) (2019年12月26日 0時) (レス) id: ad6d0057cd (このIDを非表示/違反報告)
ぴぷ(プロフ) - 鯉口さん» 鯉ちゃん(*><*)ありがとう〜〜〜！続編は明日上がる気がするので続きも是非ぜひよろしくお願いいたします♪♪ (2019年12月26日 0時) (レス) id: def2dae9c2 (このIDを非表示/違反報告)
ぴぷ(プロフ) - taka10さん» 訂正ありがとうございます(*><*)長い話になってしまってますがこの先も是非よろしくお願いいたします♪ (2019年12月26日 0時) (レス) id: def2dae9c2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
