【d!】 Lost second【tn】

2 ページ19

.


　確かに、他人の恋愛事情なんて全く興味無いが、二人の事となるとどうにも上手くいかせようと口を出したくなってしまう。その動力はただ、自分が道を違えたトントンさんとAさんを見たくないという我儘からだった。


「なぁ、ショッピ君。ちょっと変なこと聞いてもええかな」

「なんすか」


　ふと、そんなことを言ったトントンさんが何処か真剣そうに俺を見て口を開いた。


「ローライト、って言葉。これに聞き覚えある？」

「……ろーらいと？いえ、知りませんけど」

「そか、ならええわ」

「何なんすか、それ」

「いや、忘れてくれ。別に大した事やないねん」

「そう言われると気になるんですけど」

「……あー、まぁ、とにかく忘れてくれとしか言えへんわ」

「……何やねん」


　ただでさえ二人のせいで何故か俺がモヤモヤしているというのに、トントンさんの謎の言葉に余計に頭がグルグルと掻き乱される。そこまで言ったなら教えてくれればいいのに。意地悪な先輩やな、と軽く睨めば、ただ苦笑いが返ってくるばかり。


「でも、ありがとな。ショッピ君がそんな風に思ってくれとるなんて知らんかったわ」

「……別に、俺の勝手な我儘ですから」

「我儘？」

「何でもありません。話、聞いて下さってありがとうございました」

「お、おん」


　ああ、なんでこんなにムシャクシャするんやろか。お互い確実に意識は向いているのに、何かが邪魔して上手くいってくれない。俺はただ、並び合う二人の背中を、後ろから見ていたかっただけなのに。






.

3→←後輩の苦悩

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す