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｢ね、煙草ない？それがあったらもっと生きた心地がするんだけど｣
｢煙草？……ああ、どっかにあった気がする｣
ベッドから降りたトントンが放り捨てられていたシャツを羽織ってテーブルの引き出しを漁り始める。そんな姿をぼうっと見ながら、そういえば自分がちゃんとシャツを着ていることに気がついた。下着はなかった。彼が着せてくれたんだろうけど、妙な気遣いがちょっとだけ擽ったい。
｢あった。ほら、吸うならベランダな｣
｢おっと、｣
不意に小さな箱が投げられ、慌てて宙で受け取る。くしゃり、少し握り潰してしまったそれに思わず顔を顰めた。
｢……キャスター、ね。いい趣味してる｣
｢俺のやない。煙草は吸わへん｣
｢ふうん。……ああ、どっかの嬢から貰ったんだ｣
｢は？｣
封を開けば、甘いバニラの香り。……厭な臭いだ。よりによって、私の大嫌いなキャス。けれど背に腹はかえられず、仕方なしと一本を抜き取った。
ついでに半分ほど減っていた中から一枚の紙切れを手に取り、ひらり、彼に見せつける。それには真っ赤なキスマークと連絡先が書かれていて、ほんとにいい趣味、なんて鼻で笑ってやった。
｢……あんたにどう思われたって俺はどうでもええけど。一応、俺にそういう趣味はないで｣
｢多少遊んでる男の方が素敵に見えない？｣
｢さぁ。少なくともその煙草の持ち主は根から腐った莫迦やから、そんな言葉が当てはまるとは到底思えへんな｣
ああ、私もそんな莫迦をひとり知っている。思い出したくなんてないけれど。
紙切れを丸めてゴミ箱へ投げ捨ててから覚束無い足取りでベランダに出た。真っ青な海と、人のいないビーチがきらきらと朝日に照らされ、寝起きの私の目を容赦なく焼き焦がす。真冬の風が傷を刺した。痛い、寒い。でも、昨日の悪夢に浸っていた私よりはほんの少しだけ幸せだった。
｢仕事の話やけど。勿論、次も走ってくれるんやろ｣
｢……うん。だって、そうするしかないもの｣
｢そうやな。あんたにはもう、俺の手を取る以外に出来ることはない。それでしか、生きられへん｣
肩にふわりとブランケットが掛けられた。冷たい現実を突きつけながら、やさしさもみせるなんて本当に、酷い男だ。それでもまだ彼は莫迦の中でもマシな人間に見えてしまったから、甘ったるい煙を肺いっぱいに吸い込んで、それから笑ってやったの。
死ぬ時は、一緒よ？って。
｢ええよ｣
また、彼も穏やかに笑っていた気がした。
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You need to stop to smell the roses.→←＊
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ぴぷ(プロフ) - Adlerさん» Adlerさん、はじめまして！ｺﾒﾝﾄありがとうございます~！そう言っていただけてとっても嬉しいです！わたしもﾃﾝｼｮﾝﾌﾞﾁ上げで頑張ります！ (2020年10月11日 14時) (
レス) id: def2dae9c2 (このIDを非表示/違反報告)
Adler(プロフ) - 初めまして！コメント失礼します！The戦争屋の小説でテンション上がっています！更新頑張ってください！！ (2020年10月11日 11時) (レス) id: 17a3f4fea4 (このIDを非表示/違反報告)
ぴぷ(プロフ) - レーナ（アンテファン）さん» レーナさん、コメントありがとうございます！面白いと言っていただけてとっても嬉しいです☆ 更新がんばります~！ (2020年10月7日 22時) (レス) id: def2dae9c2 (このIDを非表示/違反報告)
レーナ（アンテファン） - 面白い小説を発見☆頑張ってくださいー (2020年10月6日 22時) (レス) id: c89295cbe6 (このIDを非表示/違反報告)
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