夢ではないらしい ページ10
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聞き慣れたメロディが鼓膜を揺さぶり、ふわふわと意識が浮上する。ゆっくりと瞼を押しあげれば閉じたカーテンから差し込む朝日が眩しくて枕に顔を埋めた。
暫くアラームを止めないままベッドの中でうだうだとひとりでに起床をごねながら、ズキズキと痛む頭に呻き声を上げる。二日酔いだ、最悪。それと眠い、とにかく眠い。あんまり寝れなかったからなぁ、というところまで脳内でボヤいて、はっとした。
そういえば。
ベッドから飛び起きバタバタとリビングへと向かう。ワンチャン昨日のトントンそっくりさん事件、夢だったのでは?という謎の閃きが脳裏を掠めたのだ。だって、よく考えたらあまりにも不可思議過ぎる。昨日は散々呑んだし、全部私の妄想でしたとか─────
「な、なんや、そんな慌てて」
「………ちがうかぁ」
「は?」
リビングにはやっぱりトンくんがいて、勢いよく扉を開けた私の方へ振り向いて首を傾げていた。
どうやら夢ではなかったらしい。
「いや、何でも。おはよ、トンくん」
「ん、おはよ。……ふは、あんた、凄い寝癖やけど」
「っえ、」
ここ、なんて言って自分の前髪に指をさすトンくんがくすくすと笑う。その瞬間にぶわり、と顔に熱が昇った。そんなやばい寝癖ついてる?やだ、死ぬほど恥ずかしい。
咄嗟に前髪を押さえ込み、再びバタバタと足を鳴らして洗面所へ駆け込む。鏡を見れば、確かに笑ってしまうようなとてつもない頭をした私が映り込んだ。
彼が私の知るトントンとは違う人だってことはもう分かったけれど、それでも同じ顔で、同じ声だからあんな風に笑われると心臓に悪い。
朝から忙しない心臓を押さえつけて、ひとつ深呼吸をしてから準備に取り掛かった。
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ぽっぷこーん(プロフ) - CSSのON/OFF出来るようにしてくれると嬉しいです。デフォに慣れてるとあまり落ち着かなくて……無理でしたらすみませんが、ご検討よろしくお願いします。めちゃくちゃ面白くて好きです。見てる途中です (2021年11月4日 17時) (レス) id: 23b3a74ded (このIDを非表示/違反報告)
都 はなれ(プロフ) - はじめまして、ひぷさんの他作品から来たものです。CSSが切れないので設定の方変えていただくことは可能ですか?都合のお願いで申し訳ありませんがよろしくお願いします。 (2021年2月6日 22時) (レス) id: 70f991d98e (このIDを非表示/違反報告)
ぴぷ(プロフ) - 倉の中の石さん» 倉の中の石さん、初めまして!そう言っていただけるととっても励みになります。ゆっくり更新になってしまいますが、是非この先も楽しんでいただけたら幸いです。 (2019年11月21日 18時) (レス) id: def2dae9c2 (このIDを非表示/違反報告)
倉の中の石(プロフ) - めっさ面白いです!夢主ちゃんがヒロインヒロインしてなくて非常に好感が持てますね!更新頑張って下さい。応援してます! (2019年11月20日 2時) (レス) id: b9ac23ea5c (このIDを非表示/違反報告)
ぴぷ(プロフ) - 零さん» 零さん、初めまして!お目通しいただきありがとうございます。上手く違いを出せているのかとても心配だったのでドキドキしていただけてとっても嬉しいです!これからもどうぞ、当作品を宜しくお願いいたします。 (2019年11月10日 23時) (レス) id: def2dae9c2 (このIDを非表示/違反報告)
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