勝負を挑む ページ40
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日曜日の朝。遅めにセットしたアラームに起こされベッドから抜け出した頃には既に十時前、と大分ゆっくりしてしまった。トンくんはいつも起きるの早いみたいだし、とっくに起きていることだろう。
今日は何しようかなぁ、なんて考えつつリビングの扉を開けば、ソファーに座って小説を読んでいたトンくんが顔を上げてにこりと微笑んだ。
「おはよ、A」
「おはよー、トンくん」
ふあ、と欠伸を零しつつ、まだぼんやりとした頭のまま空いているトンくんの隣に座り込んでテーブルの上に置かれているリモコンを手に取り、何気なくテレビの電源を入れる。日曜日の番組って何やってたかなぁ、と適当にチャンネルを回そうとすれば、突然隣のトンくんが「うぉっ!?」と驚きの声を上げた。
「っど、どうかした?」
「っえ、あ、いや、急にモニターから音出たから、ちょっと驚いてもうた」
「……もしかして、テレビ初めて?」
「てれび?」
手に持っていた小説をきゅっと抱えてテレビを凝視するトンくん。普段からあまりテレビを付ける習慣が無く、見るとしたら休日くらいだったのでそういえば彼の前でテレビを付けるのは初めてだった事に気が付いた。
しかしモニターはあってもテレビは無いのか。つくづくトンくんの故郷は不思議だと思う。あ、そういえばパソコンはあったんだっけ。
「このリモコンの赤いボタンが電源だから、いつでもつけていいよ。チャンネル変えれば色んな番組見られるから」
「……はえー、凄いなぁ。こんな綺麗に映るもんなんや」
「ニュース番組とか見てたら結構この国のこと分かるんじゃないかな?」
「映像付きでニュースが見れるんか、それはええな。うちじゃラジオやったから中々詳しい状況までは分からんかってん」
「ラジオもあるけど、今じゃ殆ど聞くことないかなぁ」
テレビには可愛らしい子犬が駆け回っている映像が流れていて、トンくんが「可愛ええなぁ」なんて言いながら表情を綻ばせている。そんなトンくんもかなり可愛いのだけど、口にはしないでおこう。
テレビに釘付けになっているトンくんの隣で微笑ましく私も子犬を眺めていれば、ふと視界の端に据え置きのゲーム機が映り込む。そうだ、きっとテレビゲームも知らないだろうから、今日はこれにしよう。
「トンくん、一緒にゲームしよ!」
「ゲーム?」
にんまりと笑って提案すれば、トンくんがわくわくしたような表情を浮かべてこくりと頷いた。
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ぽっぷこーん(プロフ) - CSSのON/OFF出来るようにしてくれると嬉しいです。デフォに慣れてるとあまり落ち着かなくて……無理でしたらすみませんが、ご検討よろしくお願いします。めちゃくちゃ面白くて好きです。見てる途中です (2021年11月4日 17時) (レス) id: 23b3a74ded (このIDを非表示/違反報告)
都 はなれ(プロフ) - はじめまして、ひぷさんの他作品から来たものです。CSSが切れないので設定の方変えていただくことは可能ですか?都合のお願いで申し訳ありませんがよろしくお願いします。 (2021年2月6日 22時) (レス) id: 70f991d98e (このIDを非表示/違反報告)
ぴぷ(プロフ) - 倉の中の石さん» 倉の中の石さん、初めまして!そう言っていただけるととっても励みになります。ゆっくり更新になってしまいますが、是非この先も楽しんでいただけたら幸いです。 (2019年11月21日 18時) (レス) id: def2dae9c2 (このIDを非表示/違反報告)
倉の中の石(プロフ) - めっさ面白いです!夢主ちゃんがヒロインヒロインしてなくて非常に好感が持てますね!更新頑張って下さい。応援してます! (2019年11月20日 2時) (レス) id: b9ac23ea5c (このIDを非表示/違反報告)
ぴぷ(プロフ) - 零さん» 零さん、初めまして!お目通しいただきありがとうございます。上手く違いを出せているのかとても心配だったのでドキドキしていただけてとっても嬉しいです!これからもどうぞ、当作品を宜しくお願いいたします。 (2019年11月10日 23時) (レス) id: def2dae9c2 (このIDを非表示/違反報告)
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