2 ページ2
.
「やっぱり、トントンだ」
目の前の強盗が自分の知り合いだったことで幾らか恐怖感が薄れてくれた。それも幼馴染だというのだから一気に脱力してしまう。
しかし、トントンにしてはあまり面白くない冗談だ。人の首にナイフなんて当てて……ああ、きっと偽物なんだろうけども。あれ、でも確かにエレベーターの方に歩いていったの見たんだよなぁ。もしやマジックのつもり？それとも私、酔いが回りすぎて幻覚でも見てた？
「……初対面で馴れ馴れしいな。俺の名前知っとんのなら、計画的な誘拐か」
「トントン、ウケ狙ってるつもりなら申し訳ないけど全っ然面白くないからやめよ？さっきやってたモノマネの方が数百倍面白かったよ」
「はぁ？」
何だっけ、ほら。何かのモノマネしてたでしょ。ネタ知らなかったけど他の人たち大爆笑だったし。
トントンも今日は大分呑んでいたからきっと頭が上手く回っていないのだろう。とにかく、強盗じゃないと分かって安心した。気が緩んだせいかちょっと吐き気が込み上げてくる。
ふぅ、と息を吐き、それから彼が未だに私の首元に宛がっている玩具のナイフを退けようとその手を掴む。ぐ、と押し込んで、しかしビクともしないことに思わず顔を顰めた。
「……あんた、この状況分かっとんの？」
「こんな深夜に女の子の家に押しかけて何するつもりだったのさ。それよりほら、ナイフ退けてくれる？」
「……はぁ」
いや、ため息をつきたいのは私の方なんだが？こんなセンスのないギャグにこちとら心臓が止まりかけたってのに。……いや、もしかして、ここで乗らない私の方がセンス無い？そういうこと？
なんて、頭の中で葛藤を繰り広げていれば、押し込んでいた私の手が逆にぐっと押し込まれた。つまり、首元にナイフがくい込んだということで。
「何でか冗談やと思っとるらしいけど、これで分かってくれたか？あんた、あともう少し俺が力入れたらぷっつり、死ぬんやで？」
「………はぇ、」
鉄の冷たさが触れた部分に鋭い痛みが走った。ちらりと視線を落としてみれば、ナイフから伝う鮮血が彼のはめていた白手袋に染みをつくっているのが見えてしまう。
ちょっと、待って？
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 660人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぽっぷこーん(プロフ) - CSSのON/OFF出来るようにしてくれると嬉しいです。デフォに慣れてるとあまり落ち着かなくて……無理でしたらすみませんが、ご検討よろしくお願いします。めちゃくちゃ面白くて好きです。見てる途中です (2021年11月4日 17時) (
レス) id: 23b3a74ded (このIDを非表示/違反報告)
都 はなれ(プロフ) - はじめまして、ひぷさんの他作品から来たものです。CSSが切れないので設定の方変えていただくことは可能ですか？都合のお願いで申し訳ありませんがよろしくお願いします。 (2021年2月6日 22時) (レス) id: 70f991d98e (このIDを非表示/違反報告)
ぴぷ(プロフ) - 倉の中の石さん» 倉の中の石さん、初めまして！そう言っていただけるととっても励みになります。ゆっくり更新になってしまいますが、是非この先も楽しんでいただけたら幸いです。 (2019年11月21日 18時) (レス) id: def2dae9c2 (このIDを非表示/違反報告)
倉の中の石(プロフ) - めっさ面白いです！夢主ちゃんがヒロインヒロインしてなくて非常に好感が持てますね！更新頑張って下さい。応援してます！ (2019年11月20日 2時) (レス) id: b9ac23ea5c (このIDを非表示/違反報告)
ぴぷ(プロフ) - 零さん» 零さん、初めまして！お目通しいただきありがとうございます。上手く違いを出せているのかとても心配だったのでドキドキしていただけてとっても嬉しいです！これからもどうぞ、当作品を宜しくお願いいたします。 (2019年11月10日 23時) (レス) id: def2dae9c2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
