教えて、恋のFlavor (ページ9)

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「….んっ、」

何が起きているか分からなかった。
ぼやけた視界の中で辛うじて分かったのは、大きないのちゃんの瞳がゆっくり閉じたこと。なんだかこれ以上は目を開けてはいけない感じがして、咄嗟に自分もぎゅうっと目をつぶった。

頭がクラクラする。全身の意識すべてが唇に集中して、何も考えられなくなる。
舌を絡めたりすることはないのに、長くて角度をゆっくり変えるだけの、だった。

「…っ…、は」

ゆっくりと離した後も、ピントがまだ合わなくてコンタクトレンズが外れたのかと錯乱する。
呼吸まで止めていた俺はかなり苦しくて、大きく息をつく。

「…ごめん。でも、好きだよ…大ちゃん」

「…、お、おう…」

かなりかっこ悪い返事をしてしまった。一つ一つの頭の回線が上手く繋がらなくて、何が起きているかまだ整理できない。

キス、された、…んだ。
気がついたら、いのちゃんの顔が目の前にあって…。
そしたら、いのちゃんが、スキって…。
スキ…？ん…？んん？

「いのちゃんって俺のことスキだったの？」

「は？」

長い沈黙の後、ぐんぐんいのちゃんの眉間に皺が寄って、俺の頬をむんずと掴んだ。
やっべぇ、いのちゃんが怒るって滅多ないのに。

「何年前からお前のこと好きだと思ってんだよバカ」

「何年…って…え？そんなに前から…？」

「あー！言っちゃった！くっそ！」

頭をわーっと抱えながら項垂れるいのちゃん。「かっこわりぃ…かっこわりぃ…」なんてブツブツ言いながら机に顔を伏せている。

初めからいのちゃんは、ずっと恋心を隠してきたのだ。
あんな大人げに振舞ってて、俺に子供扱いする癖に。女たらしクソ野郎のくせに。いのちゃんの癖に。

「…はははっ…いのちゃ…おまっ…おもしれぇなぁ…！」

「うるさいよ大ちゃん！なんも面白くないから！」

なんて面白いんだろう。面白くて

かわいい。

二ヒッと笑いかけると、諦めかけたようにガシガシ頭をかくいのちゃん。
こんなにも真っ直ぐに、想いをぶつけてくれた。男同士なのに、不思議と不快感は感じなくて。
そっと彼の手に自分の手を重ねる。

「いのちゃんの片想い、儚いモンにはさせらんねーからなっ」

「うるせーなぁ、こっちこそ、すぐ振り向かせてやる」

お互い男だ。意地っ張りだから両者一歩も譲らない。笑い合ってこつんと額をぶつけ合う。
目が合って、笑い合って、ゆっくりと瞳を閉じる。

あとは唇を寄せ合うだけだった。