教えて、恋のFlavor (ページ22)

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「本当にお二人は仲がいいんですね～。では、次に恋愛の質問について、お伺いしたいのですが、…じゃあ有岡さんから。まずは『好き』と言われたいシチュエーションって何ですか？」

まただ。俺にまとわりつく『スキ』
分からない。スキって、なんだ。

「…」

いつもすらすら出てきた答えが、今日はなかなか出てこない。頭痛がぴりりとする。

『…ごめん。でも、好きだよ…大ちゃん』

『…、好き…』

いのちゃんの柔らかい声が耳元で大きく木霊する。やめろ。こんな時に。
余計に苦しくなる。

「有岡さん…？」

「あ、すみません。少し出てきます」

ジーンズのポケットに入ったスマホがバイブと共に鳴った。電話の相手を確認して席を立つ。俺は、『スキ』から逃げているのかもしれない。電話の声がやけに裏返って、小さく唾を飲んだ。

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「あれ？大ちゃん？珍しーね、局一緒なんて」

「お、いのちゃん」

髙木との取材を終えて、休憩スペースでコーヒーを避けながら飲み物を選んでいると、まだメイク前のいのちゃんと鉢合わせた。
ストレートマッシュに前髪がぱっくり割れて、いつものいのちゃんだ、なんて安心する。

「今日は？撮影？取材？」

「いや、取材。いのちゃんスタジオっしょ？」

そうそう、なんて頭にぽんぽんと手を置きながら、コーヒーをセレクトする彼。あーあ、俺もコーヒー飲めるようになりてぇよ、と子供じみたことを思いながら、オレンジジュースのボタンを強めに押した。

なんだか、居心地悪くて、妙にいのちゃんを意識してしまう。

「じゃ、俺、行くな、」

「あ、ちょっと待って」

袖をクイッと引っ張られてからこちらを振り向かされる。真っ直ぐな黒い瞳が俺を射抜いて、動きを静止させられる。

「…好き、頑張って」

「…、うん」

いつからだろう、彼は自己の溢れた感情を隠さなくなった。俺は『スキ』が降り積もって、嬉しいはずなのに、苦しくなる一方だ。
その言葉を重ねられる度に、何かがせり上がって自分を追い詰める。

『スキ』が苦しい。
『スキ』が怖い。