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「これだけ気持ちいいことしたんだよ?それがずっと続けば最高じゃん」
どうやら女のチョイスを間違えたようだ。くねりと体を動かしながら白い足を組む。いやらしい太腿が擦り合う音が聞こえた。
「ほら…好きになっちゃいなよ…そうすれば楽だよ?」
小さな耳鳴りが遠くの方で聞こえる。
わんわんと木霊して、少しずつ俺の頭蓋骨を割っていく。うるさい。うるさい。
「もしかして…人のこと好きになれないの…?…かわいそう」
かわいそう。
その言葉に何かがぷつんと切れる。手にしたタオルをぎゅっと握りしめると、勢いよくバスルームのドアを閉めた。音が木霊して、耳鳴りがすっと消える。
シャワーを出すとどろどろの気持ちが全部流れていく気分になった。
あのまま女をひっぱたくなり、殴るなり手を出すことはできた。しかし、もう触れることさえも嫌だった。
そうか、自分はかわいそうな人間なのか。
ろくでもない人間、どうしようもない人間なんてものより、遥かに醜いものかもしれない。
レンアイができないことは、かわいそう、なんだ。
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「…大ちゃん…?顔、引きつってるよ…?」
「…っ、は」
焼肉の煙の向こうの先に心配そうに伺ういのちゃんがいる。せっかくの楽しいいのちゃんとの飯だったのに、自分の汚い過去を思い出したせいで、台無しだ。
「お、おー、大丈夫」
気付いたら自分が焼いた肉は真っ黒焦げに…なる前に彼が俺の皿に避難してくれていたようだ。いのちゃんの小さな優しさにふっと頬が緩む。
いのちゃんは…レンアイできないやつって…『かわいそう』だと思う…?
口に出したら答えを聞くのが怖くて言葉はするすると体の中に戻っていく。一度吐き出したものをまた体の中に入れるような感覚に囚われて眩暈がした。
いのちゃんは絶対にかわいそう、だなんて思わないし、寧ろ俺の意思を尊重してくれるだろう。
それなのに、残りの1%がそうじゃなかったら、を連想させて酷く心が震えた。
あんなやつに言われたことなんて忘れてしまえばいい。それなのに強く根付いているのは、自分が
かわいそうで、
間違っている
ということを自覚しているのかもしれない。
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作者名:きなこも | 作成日時:2018年3月20日 18時