教えて、恋のFlavor (ページ15)

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小さな変化ページ15

ar side

最近少しだけ変わった。

自分の中にある心が。
ロウソクだけをぽつんと立てていた心の中に、いのちゃんがそっと火を灯してくれたような。まだまだ小さく燃える、火。

出入りの激しいテレビ局の楽屋で、メンバーとだらだら待ち時間を過ごす。この春の時期は、新しい番組の編成で、あちこちに人が走り回る。慌ただしい風景とは裏腹に、いのちゃんの目は、ゆっくりな瞬きを繰り返していた。

「ねみーの？隣、空いてるけど」

「マジ？有岡先輩今日素直じゃないですか」

フラフラ歩くと、俺が座っていた二人掛けのソファに腰を下ろす彼。俺が組んでいた足を解くと、ふわふわの頭がぽすんと乗る。

「大ちゃんは腿の形がいいね、眠くなる」

「は？なんだそれ、寝るんだろ、おやすみ」

随分と早口でまくし立ててしまったが、自分の顔はかなりニヤついていると思う。薄いクマと、小さいニキビを顔にくっつけている寝顔を、そっと指で撫でた。

変わったこと。
それは以前よりも、もっといのちゃんに触れたくなったことだ。
今まで気にしなかった髪、きめ細やかな肌。血管が浮き出たキレイな手。

撮影でも、収録でも、仕事以外も、気が付けば彼に触れている。
そんな自分に、少し気が引けた。

「いのおちゃんはほんと、よく寝るよな」

「だろ？見ろよこれ、まーたデコにニキビできてんの」

くすくすと笑う山田は、真剣にいのちゃんにオススメの美肌化粧品を調べていた。スマホでいくつかの化粧品を俺に見せてくる。

「あー、これもいいよな…っ、いって！」

山田と二人でスマホを覗き込んでいると、膝元のいのちゃんに置いていた片手の指が、ガリッと噛まれた。うっすらピンク色の歯形ができて、鈍い痛みが走る。

「何すんだよ、ばか、いてーな」

いのちゃんの顔を覗き込むと、思うことかヘラヘラ笑っている。腹が立って軽く頬をつねってやった。つられて俺も口角が上がる。山田はスタッフに呼ばれて、楽屋を後にした。

「大ちゃんが…他の奴と楽しそうなのは、好き…だけど、好きじゃない」

「はぁ？どゆこと？変なの、いのちゃん笑」

ふっと笑ってまた顔を横に倒して目を瞑る彼。10年以上も一緒に過ごしても、彼の分からないことはまだまだある。
少しずつ分かるが増えて、少しずつ変わるが増えて言ったら、俺は大きく変われるだろうか。
ぼんやりとそんなことを考えながら、また無意識に彼の毛先に触れた。