教えて、恋のFlavor (ページ12)

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水分を多く含んだ黒目がちな瞳。
細いのに触れるとふわふわする毛先。
自分よりもくっきりと出た喉仏。
骨ばっている指や手。

そんなところに目がいっては逸らすということを繰り返す。

別に俺は大ちゃんが好きなわけでも、男が好きなわけでもない。

言い聞かせた言葉は水たまりに一滴落ちて、溢れた。溢れた先はどうなるんだろう。そんなの知らないし知りたくもない。

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「えっ！大ちゃんヤッたの？！早くね？wwえ、どんな感じ？」

いつだって、太陽の周りには人が集まる。
そんな大ちゃんを見ているのが大好きだった。群がる同い年のJr.たちが声を弾ませて問い質す。
もう暦の上では夏は終了、なのに蝉の大合唱は止まらない。

「やべぇよなっ、大ちゃん童貞卒業だってさ、伊野尾」

閉め切った窓から、蝉の精一杯の主張。
窓を開けると、むわっとした熱気と蝉が空気を覆い尽くす。気持ちが悪い。

「そっか、すごいね」

そんな話を聞いているより、蝉の鳴き声を聞いている方が1万倍マシだった。
全力で非常階段を降りて、アイスの自販機を目指す。
隣のベンチで腹を抱えて笑う俺と、舌を出して顔を歪ませる大ちゃんが幻覚のように見える。
熱くて、耳鳴りがして、熱くて、目眩がする。

目の前の自販機を衝動的に蹴りつける。
ガァンッという音と共に、自販機が揺れた。
チョコミント味の画像は、それでも平然と変わらなかった。

「…くっそ……っ、好き、だ…」

ジワジワ、ギシギシと蝉がつきまとう中学の夏。こんなにも自分の「好き」が溢れても、君からは一生貰えない二文字。「好き」は厚かましくて、傲慢で、それでいて繊細で、傷つける言葉で、悲哀じみた言葉だった。

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