教えて、恋のFlavor (ページ2)

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「タクシー拾えなかったな…わりぃ…」

「いーじゃんたまには。夜風に吹かれて酔い冷まそーぜ？」

落胆から顔を上げると確かに心地よい風が耳元で踊る。
こんなふうにロケ以外で夜の道を歩いたのはいつぶりだろうか。マネージャーやタクシーを使うことが増えてきたザ・芸能人な俺たちだが、たまにはこんなのもいいかもしれない。
ポツリポツリと電灯が灯す道路脇には、あちこちの居酒屋から競うように笑い声が耐えなかった。

「ちゃん、落ちたらダメだよ、そこピラニアな」

白線の上をよろよろと渡りながら、いのちゃんにも同じことをするように促す。
「はいはい」なんて子供をあやすような返事をすると、彼もまたわざとよろけながら歩いた。
いい大人二人が何やってんだか。

「大ちゃん、最近彼女とどうなの」

「なんだよいきなり笑…まあ、ぼちぼち」

彼女、と言われてヒヤッとした。
過剰に反応していないか隠しきれていればいいが、長い付き合いのいのちゃんだ、とっくに読まれているかもしれない。

「それこそ、いのちゃんはどーなんだよ」

ゆらゆらと白線を歩きながら、からかい口調で尋ねる。普通に歩けばこんな幅、大したことないのに。
後ろを歩くいのちゃんがどんな表情かは見えなかったが、少しの間があったのは感じられた。

「うまく、いかねー」

ポツリと彼は白線に向かってその言葉を落とすと、天を仰いだ。
これは彼のお決まり文句。大概が愚痴か相談だ。順風満帆なのはほんの数分だけだったりする。そんな彼を見ているのも面白い。
恋愛とはこれだけ人を変えてしまうものなのか。

「まーたかよ、まぁ、んな彼女に振り回されてるいのちゃんもいのちゃんで大変だな」

「うるさいなー、爆モテ有岡くんとはワケが違うから」

爆モテ。そんなの上っ面だろうか。
本当の俺を知ったら、彼は幻滅して離れていくかもしれないのに。

「俺がちゃんのコイビトだったら、そーんな悲しい顔させねーけどなっ」

ニカッと笑いながらピラニアすれすれのところを歩く。冗談でもそんなことにはならないだろうが。
と、その途端、後ろにいるいのちゃんの靴音がピタリと止まった。

「……じゃあ………」

「ん？」

聞き返した後から、その間が妙に心地悪く感じられた。今までいのちゃんとの無言の時間が苦しいなんて、考えたこともなかったのに。
何か、喋らなきゃ。ああ、またこの癖。

「じゃあ、俺の恋人、なっちゃおうよ」