コベルトゥーラ･インフェプト《緑》 (ページ21)

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あたりはすっかり暗くなって、さすがにもう来ないと思った私は通りかかった重岡先生にうみ先輩の携帯を預けると、屋上へ向かった。

　

　

　

『すぐ戻るって、言ったじゃん』

　

　

探しに行こうとも思ったけど、まだ先輩が来るんじゃないかってどこかで期待していた。

好きな人と回れる時間が過ぎようと、ずっと。

なのに、なのに....っ、

　

　

屋上はもちろん誰もいなくて、ただ涼しい風が吹くばかり。

そして大きな音と共に、綺麗な花火が上がった。

もう後夜祭だっけ。....花火、先輩と見たかったなぁ。

　

　

？｢A.....？｣

『っ、海斗.....』

松倉｢え、ちょ、なんで泣いてんの｣

　

　

なんで海斗がここにいるのかは分からないけど、

人肌恋しかった私は海斗を見るだけで涙が止まらなくなった。

戸惑う海斗は、ただ、抱きしめてくれた。

　

松倉｢何があったかわかんないけど、見て花火。綺麗だろ？あ、ハートあがった。｣

『....ほんとだ』

松倉｢すげーな。花火なんて。｣

『そうだね』

松倉｢いや、ちょうど屋上で見ようと思ってたところだし、Aがいてくれて良かったわ！｣

『...そっか』

松倉｢だからさ、そんな暗い顔すんなよ！

てか、そのたこ焼き冷えきってね？｣

『...バカっ、』

松倉｢え、まって俺やばいこと言った？ごめんごめんごめん、食うから！食うからさ！｣

　

　

そう言って先輩と食べる予定だったたこ焼きを頬張る海斗。

バカ、そうじゃないし。....でも、海斗らしくて笑っちゃう。

　

　
松倉｢はにははっへんはお!(何笑ってんだよ!)｣

『海斗、リスみたい笑』

松倉｢はぁ！？リスじゃねーよ！もっとかっこいいのあんだろ！！｣

『リスだよ、ほら』

　

　

撮った写真を見せると、まじでリスじゃん、、、と頭を抱える海斗。

今なら、先輩のこと忘れられる気がする。

きっと、私の勘違いだったんだ。脈あるんじゃないかなんて思った私が馬鹿だった。

忘れよ、先輩のことも。この気持ちも。

　

　

松倉｢よし、戻ろ。教室で余ったドーナツあるから食おうぜ｣

『うん』

　

海斗が私の手を取って歩き出す。

今までの事を流すように握る手の力をぎゅっと込めて、そっと繋ぎ直した。