Achroite - Ⅱ (ページ19)

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この手からページ19

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Hokuto.M

『明日の撮影行くときまえにどっかいこうよ、ほらこの前言ってた、............、』

あの日。

まだ俺たちは10代だった。

いつもの活動の他に、ドラマの撮影現場にも足を運ぶことが多かった時期。

同じメンバーで一緒に過ごすことになったその期間は、本当に楽しかったけど、

きっと彼女はそれだけじゃなかった。

月に一度の収録日。

俺の少し前を歩いていた彼女は、

楽屋の扉を開けると同時に時が止まったかのように動かなくなった。

「A？どうした？」

呼び掛けてもピクリとも反応しない。

何かがおかしい。

そう思って慌てて駆け寄ると、まっすぐ前を捉えたままの瞳から涙が頬を伝ってぽろりと落ちた。

彼女の視線の方へ目を向ければ、ほかの6つが整った中でひとつ、不自然に散らばる私物や衣装。

.........それから、今日Aの後ろで踊ることになっていたJr.のうちの2人。

全てを察して、俺は咄嗟に彼女を後ろに隠した。

こんなもの、見る必要ない。

「......お前ら、何してんの」

「......何って、(笑)」

「どういうつもり？なんかしたかよお前らに、こいつが」

「だっておかしいだろ、女がこんな待遇！7人仲良くドラマなんか出やがって」

「なんでそんな女なんかのバックで踊らなきゃなんねえんだよ」

返事をしたと思えば、女が、女なんかの。

そんな簡単で単純な言葉で彼女の努力と才能を片付けた。

あんたら2人に、同じことができるのか？

「じゃあ！！！

.........辞めりゃいいだろ、さっさと」

気付いたら大きな声が出ていた。

その後に自分でも驚くほど冷たい声が続いた。

震える手をぎゅっと握り直すと、返事をするみたいに力が返ってきた。

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