【ωrωrd!】かれのひみつ。

△＊ ページ14

羞恥心を紛らわすために、パソコンを睨み付けて仕事に取りかかる。

「雪村さんさ」
「な、なんですか……」

問題は解決したのか、先の彼は居なくなっておりショッピくんに話しかけられる。

「なんかあったん」
「え……」

まさか見抜かれてしまったのだろうか。ショッピくんは補足する。

「挙動がおかしい」
「そ、そうかな」

誤魔化しが苦しい気もするが、どうか気づかないでほしい。

「昨日もずっと上の空やったし。おかげで残業することになったし」
「う……ごめん」
「さっきも人と話してたのに喋りかけてくるし。雪村さんはTPOを弁えてる人やと思ってたから、なんかあったんかなって」

言葉に棘は少なからずあるものの、ショッピくんの人情味に触れてまた想いが募っていく。よく人のことを見ているなあ。
冷たいようでその実とても優しいショッピくん、だからこの人のことを好きなったのかもしれない。
無意識に顔がほころぶ。

「急に笑ってどうしたん」
「ショッピくんは優しいなあって」
「……ほんまに大丈夫？」

怪訝な顔をされてしまった。

「とにかく、早くノルマ終わらせて帰ろうや。もう残業はこりごりやし。な？」
「あいたっ」

軽くデコピンをされた。地味に痛い。

「あははっ」

いたずらが成功した子どものように笑うショッピくん。

「元気が出たようで何より」
「え……？」
「ずっと悲しそうな顔してたやん。だからどうやって元気付けようか考えててん」

本当に人のことをよく見ている。そして手を差し伸べようとしてくれた。

「……ほんとに優しいね」
「……まさか」

そう言って謙遜するショッピくん。どこか、この状況に既視感を感じる。
そうだ、いつか読んだ少女漫画だ。確かあれは学園もので男の子の方が女の子に気があった。多少は異なるものの、ほとんど一緒のシチュエーションに思わず自己投影してしまう。
いつか、自己投影などの虚構に頼らずに、彼と共にいる暮らしが出来ることを望んでいる。

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