私の願い ページ12
「…だから私、特別視されるの苦手なの」
俯きながら喋っていると、不意に抱きしめられた。
「…ごめんね、そんなこと知らなくて…」
相手は芦戸さんだった。
「しかし40歳の男性ですか？信じられませんね…」
「でもネットゲームではよく聞くよ、だからネットでボイスチャットはするなって親に言われてるし」
「Aちゃん、怖いとは思うけど爆豪ちゃんと轟ちゃんなら大丈夫よ？まずはお友達として知ることから始めてみたらどうかしら？」
「…うん、ありがとう蛙吹さん」
「梅雨ちゃんって呼んで」
皆で横並びになってベッドに座った。
友達になれたことは嬉しいけど、正直恋愛はまだ怖い。
「じゃあさ、姫ちゃんは今一番何がしたい？」
(私が、したいこと…)
「…戻りたい。いつも当たり前のようにログインして皆で遊んでた頃に戻りたい。私に言い寄ってきた人も、ボイスチャットする前は失敗しても励ましてくれる良い人だったのに。私の生活にはずっとオンラインゲームがあったから…」
「今はどうなさっているんですか？」
「…FPSっていう対人ゲームやってる…。会話しなくて一人で戦えるから」
「やっぱ皆といるほうが楽しいもんね…」
「じゃあさ、皆でゲームしよ！って言いたいけど、姫ちゃんは暫くゲームお預けだよね？」
「…うん、やっぱゲームが原動力だからMMOやりたい…」
そのとき、私の横に座っていた蛙吹さんが立ち上がった。
「皆で遊ぶことはゲームじゃなくても出来るわ。だからこそ今日皆でキャンプに来たんじゃない？」
ケロッと言いながら蛙吹さんは笑ってくれた。
「…うん、そうだね」
(でも、何か違うんだよなぁ…)
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作者名：でんきねずみ | 作成日時：2023年2月22日 21時
